障害者雇用は正社員になれない?|契約社員から1年で上がった当事者×元採用担当の答え

木の机に置かれた社員証のストラップと、小さな苗木の鉢 障害者就職支援
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KEN-3
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KEN-3
障害者雇用13年目・特例子会社の元採用担当

一般雇用で働いていた頃にうつと双極性障害を発症し、精神障害者保健福祉手帳を取得。就労移行支援を経て、大手企業の特例子会社へ。面接を受ける側と、面接をする側の両方に座りました。

→ くわしいプロフィール

  1. はじめに
  2. 1. 障害者雇用だと正社員になれない? まずはデータで現状を知る
    1. 1-1. 精神障害のある人で正社員は約3割。障害の種類で大きく違う
    2. 1-2. 「正社員」「契約社員」「無期雇用」は何が違う? 雇用形態をやさしく整理
    3. 1-3. 契約社員から正社員に上がる人も実際にいる
    4. 1-4. 国も正社員化を後押ししている
  3. 2. 障害者雇用で正社員になれない5つの理由
    1. 2-1. 求人の多くが「契約社員スタート」になっている
    2. 2-2. フルタイムで安定して働けるかを、慎重に見られている
    3. 2-3. そもそも登用の制度や実績がない会社がある
    4. 2-4. 評価の基準と登用の時期が、本人に見えていない
    5. 2-5. 体調の波や、早く辞めてしまうことへの心配が残っている
  4. 3. 元採用担当が見た「正社員に登用される人・されない人」の違い
    1. 3-1. 登用で見られていたのは、能力より「安定」と「積み重ね」
    2. 3-2. 登用された人に共通していたこと
    3. 3-3. 登用が見送られやすかったケース
    4. 3-4. 体調の波があっても、伝え方と対処しだいで評価は変わる
  5. 4. 【体験談】契約社員で入社した私が、1年後に正社員になるまで
    1. 4-1. 入社したときは半年ごとの契約社員。それでも不安が小さかった理由
    2. 4-2. 試用期間から1年目にやったこと
    3. 4-3. 正社員になって変わったこと・変わらなかったこと
    4. 4-4. 13年働いて分かった「正社員になったあと」の現実
  6. 5. 今の会社で正社員登用を目指す人がやること
    1. 5-1. 登用の条件・時期・これまでの実績を確かめる
    2. 5-2. 勤怠の安定を「記録」で見せる
    3. 5-3. 配慮してほしいことと、自分なりの対処法を見える形にしておく
    4. 5-4. 評価面談で正社員を希望すると伝えるときの言い方
    5. 5-5. 5年を超えると「無期雇用」に変えられるルールを知っておく
  7. 6. 求人票と面接で「本当に正社員になれる会社」を見抜く方法
    1. 6-1. 「正社員登用あり」と「登用の実績あり」は別のもの
    2. 6-2. 求人票で見るべき5つの項目
    3. 6-3. 面接や会社見学で、印象を悪くせずに聞く方法
    4. 6-4. 最初から正社員の求人を探すなら、転職エージェントで条件を絞る
  8. 7. 正社員にこだわる? こだわらない? 自分に合う働き方の決め方
    1. 7-1. 障害者雇用で正社員になるメリット・デメリット
    2. 7-2. 契約社員でも長く安定して働ける会社はある
    3. 7-3. 給料は雇用形態だけでなく、賞与なども含めた年収全体で比べる
    4. 7-4. まだフルタイムが不安なら、先に働く土台を作る
  9. 8. よくある質問
    1. Q1. 障害者雇用で正社員になれる確率は?
    2. Q2. 契約社員から正社員まで、何年くらいかかる?
    3. Q3. 短時間勤務でも正社員になれる?
    4. Q4. 「正社員登用前提の契約社員」を提案されたら、受けるべき?
    5. Q5. 契約社員5年目でも正社員になれない。辞めるべき?
    6. Q6. 一般枠(障害を伝えないクローズ就労)で応募したほうが、正社員になりやすい?
    7. Q7. 正社員になったら、配慮は受けられなくなる?
  10. まとめ|「なれない」の理由を切り分ければ、次の一歩が見えてくる

はじめに

朝の光が差す机に置かれた手帳と卓上カレンダー

障害者雇用の求人を探していて、「契約社員」「パート」の文字ばかりが目に入ってきませんか?

いままさに契約社員として働いていて、「このまま、ずっと正社員になれないのかな」と不安になっている人もいると思います。

先に結論をお伝えすると、障害者雇用でも正社員にはなれます。

ただ、「なれない」と感じる理由には、自分の側にあるものと、会社の仕組みの側にあるものの2種類があるんです。

どちらなのかを切り分けられれば、今の会社で登用を目指すのか、別の会社へ移るのかを決められますよ。

この記事でわかること

  • 障害者雇用で正社員として働いている人の割合と、雇用形態の違い
  • 正社員になれない理由と、採用担当が見ていた「登用される人・されない人」の違い
  • 契約社員から1年で正社員になった私の体験
  • 今の会社で登用を目指す方法と、「本当に正社員になれる会社」の見抜き方

こんな人に読んでほしい

  • 障害者雇用の契約社員として働いていて、正社員になれるか不安な人
  • 転職活動中で、契約社員やパートの求人ばかりに当たって迷っている人
  • 今の会社で登用を待つか、別の会社へ移るかを決めたい人

私は一般雇用の3社すべてで体調を崩し、双極性障害と診断されて精神障害者保健福祉手帳を取得しました。

就労移行支援に3か月通ったあと、大手企業の特例子会社に障害者雇用で入社しています。

入社したときは、半年ごとに契約を更新する契約社員でした。正社員になったのは、その1年後です。

そこから13年以上、同じ会社で働き続けています。

社内では人事・採用の仕事も経験しました。採用担当として、契約社員から正社員に登用された人も、登用まで時間がかかった人も、近くで見てきています。

この記事では、障害当事者と特例子会社の元採用担当、両方の立場からお話しします。

2回の休職を含む私のこれまでの道のりは、プロフィールの「これまでの道のり」にまとめています。

1. 障害者雇用だと正社員になれない? まずはデータで現状を知る

色の違う付箋で分けられた書類の束

「障害者雇用=契約社員」というイメージは、どこまで本当なのでしょうか。この章では、国の調査の数字と、雇用形態の違いを整理します。

数字を知っておくと、「なれない」がどのくらいの話なのかが見えてきますよ。

1-1. 精神障害のある人で正社員は約3割。障害の種類で大きく違う

障害者雇用で働く精神障害のある人のうち、正社員は32.7%です。

およそ3人に1人が、正社員として働いていることになります。

これは、厚生労働省の「障害者雇用実態調査」の数字です。

前回(2018年)から5年ぶりに行われた2023年6月の調査では、障害の種類ごとの正社員の割合は次のとおりでした。

障害の種類正社員の割合
身体障害59.3%
知的障害20.3%
精神障害32.7%
発達障害36.6%

(出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果」)

身体障害が約6割なのに対して、精神障害は約3割。同じ調査では、週30時間以上働いている精神障害のある人は56.2%でした。

勤務時間の短い働き方をしている人が少なくないことも、このデータから読み取ることができます。

(出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果」(PDF))

それでも、3人に1人は正社員です。「障害者雇用だから、正社員には絶対になれない」という話ではないんですよね。

1-2. 「正社員」「契約社員」「無期雇用」は何が違う? 雇用形態をやさしく整理

雇用形態の違いは、「契約の期間が決まっているかどうか」と「会社の中で正社員という区分かどうか」の2つで考えると分かりやすくなります。

期間が決まっている契約を「有期(ゆうき)契約」、決まっていない契約を「無期(むき)契約」と呼びます。

  • 正社員:会社で「正社員」と呼ばれる区分。多くは契約期間の定めがなく、賞与や昇給の仕組みが用意されていることが多い(中身は会社によります)
  • 契約社員:半年や1年など、期間の決まった契約を更新しながら働く
  • 無期雇用の社員:契約期間の定めはないけれど、正社員とは別の区分。給料などの条件は契約社員のころと同じことも多い
  • パート・アルバイト:勤務時間の短い働き方として使われることが多い

先ほどの調査では、精神障害のある人の雇用形態の内訳も出ています。いちばん多いのは「期間の決まった契約で、正社員ではない」働き方で、40.6%でした。

精神障害のある人の雇用形態割合
期間の定めがない正社員29.5%
期間の決まった契約の正社員3.2%
期間の定めがない、正社員以外22.8%
期間の決まった契約の、正社員以外40.6%

※無回答 3.9%

(出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査 調査結果の概要」(PDF))

おもしろいのは、「期間の決まった契約なのに正社員」「期間の定めはないのに正社員ではない」という人もいることです。

この調査では、勤め先で正社員と呼ばれている人を正社員として数えています。

つまり、同じ「正社員」でも、会社によって中身が違うんです。

私も入社したときは、半年ごとに契約を更新する契約社員でした。

求人票を見るときは、「雇用形態」の名前だけでなく「契約期間」の欄もあわせて見ておくと、入社後の働き方を想像しやすくなります。

求人票の見方は6章で、無期雇用に切り替わるルールは5章で詳しくお話しします。

1-3. 契約社員から正社員に上がる人も実際にいる

契約社員で入社しても、ずっと契約社員のままとは限りません。

障害者雇用では、「まず契約社員として入ってもらい、働きぶりを見てから正社員に登用する」という段階を踏む会社が少なくないからです。

契約社員から始まる求人ばかりなんですけど、それって「正社員にはなれない」ってことなんでしょうか?

KEN-3
KEN-3

そうとは限らないんです。私も入社したときは半年ごとの契約社員でしたが、1年後に正社員になりました。採用担当だったころも、1〜2年ほどで登用されていく人を何人も見てきましたよ。

会社の側から見ると、契約社員の期間は、お互いに相性を確かめる期間でもあります。

本人にとっても、体調を保ちながら仕事を覚えていけるか、自分で確かめられる時間になるんですよね。

ただし、すべての会社に登用の仕組みがあるわけではありません。

見るべきなのは「契約社員かどうか」より、「その会社に登用の仕組みと、実際に登用された人がいるか」のほう。

なれない理由は2章で、登用の実績の確かめ方は6章で取り上げます。

1-4. 国も正社員化を後押ししている

障害のある人を正社員などに切り替えた会社には、国から助成金が出る仕組みがあります。「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」という制度です。

この制度は、より安定した雇用形態に切り替えることで、障害のある人が職場に長くとどまれるようにすることを目的にしています。対象になる切り替えは、次の3つです。

  • 期間の決まった契約から、正社員へ
  • 期間の決まった契約から、期間の定めのない契約へ
  • 期間の定めのない契約から、正社員へ

この「正社員」には、勤務地や仕事の内容を限定した正社員や、短時間正社員(フルタイムより短い時間で働く正社員)も含まれます。

(出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内」(PDF))

あわせて、会社には障害のある人を一定の割合で雇う義務があります。

民間企業の法定雇用率(従業員のうち、障害のある人を雇わなければならない割合)は2.7%で、従業員を37.5人以上雇っている会社が対象です。

雇った人に長く働いてもらえるかどうかは、会社にとっても切実な問題なんです。

(出典:厚生労働省「事業主の方へ」)

なお、この助成金は会社が申請するもので、働く本人が手続きをするものではありません。制度の追い風は吹いている、と知っておくくらいで十分です。

それでも「正社員になれない」と感じる人がいるのは、なぜなのでしょうか。次の章で、理由を5つに分けて見ていきます。

2. 障害者雇用で正社員になれない5つの理由

窓辺に並んだ5つの小さな石

正社員になれない理由は、ひとつではありません。この章では、よくある理由を5つに分けて見ていきます。

読みながら、「これは自分の側の理由」「これは会社の仕組みの理由」と仕分けしてみてください。

正社員になれない5つの理由

  • 求人の多くが「契約社員スタート」になっている(会社の仕組みの側)
  • フルタイムで安定して働けるかを見られている(自分の側)
  • 登用の制度や実績がない会社がある(会社の仕組みの側)
  • 評価の基準と登用の時期が見えていない(両方)
  • 体調の波や、早く辞めることへの心配が残っている(自分の側)

2-1. 求人の多くが「契約社員スタート」になっている

1章で見たとおり、障害者雇用で働く精神障害のある人は「期間の決まった契約で、正社員ではない」働き方がいちばん多くなっています。

求人の入口そのものが契約社員になっていることが、最初の理由です。

会社の中には、「入社後に体調や仕事との相性を見てから、長く働く形に切り替えたい」と考えて、最初は期間の決まった契約にしているところがあります。

契約社員の求人に応募するのは、なんだか引け目を感じてしまいます。

KEN-3
KEN-3

私が入社した会社も、まずは半年ごとの契約社員からのスタートでした。障害者雇用の求人では、こうした形はめずらしくないんですよ。

この理由は、あなたの能力の問題ではなく、会社の採用の仕組みの問題です。

契約社員の求人に応募すること自体を、引け目に感じる必要はありません。

2-2. フルタイムで安定して働けるかを、慎重に見られている

正社員の多くはフルタイム勤務です。そのため会社は、「週5日・1日8時間を、安定して続けられるか」を慎重に見ています。

1-1で見たように、週30時間以上働いている精神障害のある人は約半分です。

体調に合わせて短い時間から始める人が多いぶん、フルタイムで続けられることを示せるかどうかが、正社員への分かれ目になりやすいんです。

KEN-3
KEN-3

私は入社したときから、フルタイムで働きました。それができたのは、就労移行支援で毎日の出勤の練習を重ね、100%近い出席率で安定して通えていたからです。

通う日数の慣らし方は、就労移行支援の週5通所がきつい人への対処法にまとめています。

なお、フルタイムでなければ正社員になれない、というわけでもありません。1-4でふれたように、短時間正社員という形もあります。

ただ、その仕組みがあるかどうかは会社によって違います。

2-3. そもそも登用の制度や実績がない会社がある

求人票に「正社員登用あり」と書かれていても、実際に登用された人がいない会社や、制度そのものがない会社もあります。

この場合、本人がどれだけ頑張っても、正社員になる道が見えてきません。

Yahoo!知恵袋には、職場実習で働けることを確かめた会社が、1日6時間のパート扱いで手取りが約10万円、「正社員登用の制度は検討中」と言われていて不安だ、という相談がありました。

制度が「検討中」の段階では、会社も入社後の約束はしにくいんですよね。

(出典:Yahoo!知恵袋「障害者雇用の正社員について」)

これは、会社の仕組みの側の理由です。今の会社に制度や実績がないと分かったら、残って待つより、登用の実績がある会社へ移ることも考えてよいと思います。

登用の実績の確かめ方は6章でお話しします。

2-4. 評価の基準と登用の時期が、本人に見えていない

「何をすれば正社員になれるのか」「いつ判断されるのか」が分からないと、不安だけが大きくなっていきます。

半年や1年ごとの契約更新のたびに、「次も更新されるだろうか」と落ち着かない気持ちになる人も多いはずです。

契約の更新のたびに、ドキドキしてしまいます。正社員になれるかどうかも分からなくて……。

KEN-3
KEN-3

その気持ち、よく分かります。私の場合は、体調が安定していて大きな問題がなければ正社員になれると分かっていたので、契約社員のころもそれほど心配していませんでした。基準が見えているかどうかで、気持ちはかなり違いますよ。

私が落ち着いていられたのは、何を満たせば正社員になれるのか、基準が分かっていたからです。

逆に言えば、基準が見えていないなら、それを確かめることから始められます。上司や人事への確かめ方は、5章で具体的にお伝えしますね。

2-5. 体調の波や、早く辞めてしまうことへの心配が残っている

会社がもうひとつ気にしているのが、「長く働き続けてもらえるか」です。正社員として迎えるなら、なおさら長く一緒に働きたいと考えます。

厚生労働省の調査では、平均の勤続年数は、身体障害のある人が12年2か月なのに対して、精神障害のある人は5年3か月、発達障害のある人は5年1か月でした。

精神障害や発達障害のある人は、勤続年数が短めであることが分かります。

(出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果」(PDF))

会社が見ているのは、体調の波があるかどうかではなく、波が来たときにどう対処できるかです。この点は、次の3章で採用担当の立場から詳しくお話しします。

休職から職場に戻るまでの流れは、休職から復職までの体験談にまとめています。

では、実際に登用される人とされない人は、どこが違っていたのでしょうか。

3. 元採用担当が見た「正社員に登用される人・されない人」の違い

明るい面談室のテーブルに置かれたノートパソコンとメモ帳

ここからは、特例子会社で人事・採用を担当していた私が、実際に見てきたことをお話しします。あくまで私個人の感覚で、会社の正式な基準ではありません。

それでも、登用されていく人には、はっきりした共通点がありました。

3-1. 登用で見られていたのは、能力より「安定」と「積み重ね」

登用の場面でまず見られていたのは、仕事の能力の高さよりも、毎日安定して働けているかどうかでした。

採用のときから、担当者が気にしているのは病名ではなく、勤務の安定性です。それは、入社したあとの登用の場面でも変わりません。

正社員は、長く一緒に働くことを前提にした雇い方だからです。

私が正社員になったときの手続きは、上司の推薦と、会社の理念などについての簡単な理解度テストでした。毎日の働きぶりを近くで見ている上司が推薦する、という形です。

派手な成果より、毎日の小さな積み重ね。登用の判断は、それを一つずつ見ていく作業に近かったんですよね。

3-2. 登用された人に共通していたこと

登用された人に共通していたのは、次の2つです。

  • 勤務が安定していること:遅刻や欠勤が少なく、予定どおりに出勤できている
  • 所属している部署に合っていること:任された仕事を落ち着いてこなせていて、周りと無理なくやりとりできている

採用の面接でも、議論されていたのは「この人はどの部署から始めるとよいか」でした。未経験であること自体は、落とす理由になっていなかったんです。

部署に合っているかどうかが登用の共通点だったことを思うと、最初にどこに配置されるかは、登用にもつながっていきます。

もし今の部署で仕事がかみ合っていないと感じるなら、それはあなたの力不足ではなく、配置が合っていないだけかもしれません。私自身の経験は、4章でお話ししますね。

3-3. 登用が見送られやすかったケース

登用が見送られたり、時間がかかったりした人には、次のような傾向がありました。

  • 体調を崩しやすく、欠勤が多い
  • 仕事の上でのミスが多い
  • 会社の人間関係になじめない

どれも、障害があること自体が理由ではありません。

欠勤が多いなら通院や薬の調整、ミスが多いならやり方の工夫や配置の見直し、人間関係なら支援員を交えた話し合いなど、打てる手があるものばかりです。

あなたにも、思い当たる項目はありませんか?もしあっても、それで正社員を諦める必要はありません。

見送られた理由が分かれば、次に何をすればよいかも見えてきます。

3-4. 体調の波があっても、伝え方と対処しだいで評価は変わる

体調に波があるだけで、登用の道が閉ざされるわけではありません。評価を分けるのは、波が来たときに早めに伝えられるか、自分なりの対処法を持っているかです。

私は体調に波があるので、正社員は無理なんじゃないかと思ってしまいます。

KEN-3
KEN-3

波があることより、波が来たときに一人で抱え込まないことのほうが大事なんです。早めに相談してくれる人のほうが、会社としては安心できるんですよ。

私もそうでしたが、少し体調に異変が出ても、「チーム全体が忙しいから」「周りに迷惑がかかるから」と言い出せない人は多いと思います。

でも実際は、無理を重ねて休職になったほうが、周りはもっと大変になります。

私は2回目の休職から職場に戻るとき、自分の状態ごとの対処法を書いた紙を作って、上長と支援員に渡しました。

会社の側から見ても、こうして自分の状態を「見える化」してくれる人は、安心材料がぐっと増えます。作り方は5章でご紹介しますね。

ここまでが、採用担当として見てきた登用の分かれ目です。次の章では、私自身が契約社員から正社員になるまでに何をしていたのかをお話しします。

●採用の段階で人事が何を見ているかは、以下の記事で詳しくお話ししています↓

4. 【体験談】契約社員で入社した私が、1年後に正社員になるまで

少しずつ大きくなる3つの植木鉢が並んだ棚

ここからは、私自身の話です。半年ごとの契約社員として入社してから、1年後に正社員になるまでに何があったのか。

正社員になって何が変わり、13年たった今どう感じているのかを、そのままお話しします。

時期私の働き方
入社したとき半年ごとの契約社員。最初からフルタイム勤務
入社3か月試用期間が終わる(当初は6か月の予定)
入社3か月目経理の部署から、窓口業務の部署へ異動
入社1年後上司の推薦と理解度テストを経て、正社員に
入社13年目(40代後半)2回目の休職。リワークを経て、部署と勤務地を変えて復職

4-1. 入社したときは半年ごとの契約社員。それでも不安が小さかった理由

特例子会社に入社したとき、私は半年ごとに契約を更新する契約社員でした。それでも、「正社員になれるだろうか」という不安はほとんどありませんでした。

理由は2-4でお話ししたとおりで、登用の基準が見えていたからです。おかげで、目の前の仕事と体調のことに集中できました。

一般雇用の3社すべてで体調を崩した私の場合、問題は会社選びではなく、働き方の枠組みそのものでした。

だからこそ、正社員になることを急ぐより、まずは新しい環境で安定して働くことを優先していたんです。

4-2. 試用期間から1年目にやったこと

契約社員の1年間で、私が意識していたのは次の3つです。

  • 体調を整えること
  • 安定して働くこと
  • 焦らず、半歩ずつ前に進むくらいの気持ちでいること

入社してすぐは試用期間(本採用の前に、働きぶりを確かめる期間)で、当初は6か月の予定でした。

ただ、出社が安定していたことと、それまでの事務経験もあって仕事の内容を認めてもらえ、3か月に短縮されました。

毎日きちんと出社することが、そのまま評価につながったんです。

配属は、まず経理の部署でした。ただ、私はどちらかというと数字が苦手で、正直あまり仕事に興味を持てずにいました。

ところが3か月目に、窓口業務のマネージャーがコミュニケーション力を買ってくれたのか、窓口業務の部署へ異動することになりました。そこから仕事が楽しくなったんです。

指導役の先輩が楽しそうに仕事をしているのを見て、「仕事って、こんなに楽しんでいいんだ」と初めて思えたのを覚えています。

KEN-3
KEN-3

最初の配属がしっくりこなくても、それで終わりではありません。3-2でお話しした「部署に合っているか」は、私自身にも当てはまっていました。

4-3. 正社員になって変わったこと・変わらなかったこと

入社から1年後、3-1でお話しした手続き(上司の推薦と理解度テスト)を経て、私は正社員になりました。

正社員になって、いちばん変わったことは何でしたか?

KEN-3
KEN-3

給料と賞与、それから気持ちの余裕ですね。逆に仕事の面は、それまでにも少しずつ任せてもらえることが増えていたので、正社員になった日から急に変わる、ということはなかったんです。

給料についてお話しすると、私の会社では次のような形です(前職の経験や年数にもよります)。

時期年収の目安
入社時の契約社員の期間250〜300万円ほど(賞与を含む)
その後(平社員のまま)400〜450万円ほどまで昇給する人もいる

もちろん、これは私の会社の一例です。それでも、障害者雇用だから給料がずっと低いまま、とは限らないことは知っておいてほしいと思います。

正社員になったからといって、仕事の中身が別物になるわけではありません。変わったのは、立場の安定と、それに支えられた気持ちのほうだったんですよね。

4-4. 13年働いて分かった「正社員になったあと」の現実

正社員になれば、すべてが解決するわけではありません。13年働いてきて、良いことも、そうでないことも見えてきました。

正社員になって13年で見えたこと
そうでないこと昇給の幅は一般雇用より小さめ。親会社の優遇制度の一部が適用されないこともある
救われたこと2回目の休職のとき、正社員という立場が大きな安心につながった

そうでないことから言うと、一般雇用に比べて昇給の幅は小さめです。親会社とは給与の基準が違い、親会社の優遇制度の一部が適用されないこともあります。

正社員になっても、この点は変わりませんでした。

一方で、正社員だったことに救われた場面もあります。40代後半、入社13年目に体調を崩して2回目の休職をしたときです。

私は退職ではなく休職とリワークを選び、復職のときには部署と勤務地を変えてもらえました。

このとき、正社員という立場だったことは、私にとって大きな安心につながっていました。

正社員は「ゴール」ではなく、長く働き続けるための「土台」。13年たった今、私はそう感じています。

5. 今の会社で正社員登用を目指す人がやること

開いた方眼ノートと、並べて置かれた3本の色鉛筆

ここからは、今の会社で正社員を目指すときに、具体的に何をすればよいかをお話しします。

3章で見た「登用される人の共通点」を、自分から見える形にしていく作業だと思ってください。

5-1. 登用の条件・時期・これまでの実績を確かめる

最初にやってほしいのは、登用の基準を確かめることです。

2-4で見たように、基準が見えないままでは、何を頑張ればよいのかが分かりません。

上司や人事に確かめたいのは、次の4つです。

  • 正社員に登用されるための条件(勤怠、評価、試験など)
  • 登用を判断する時期(契約更新のときか、年に1回の評価のときか)
  • これまでに障害者雇用から登用された人がいるか、入社から何年くらいだったか
  • 目標の決め方と、人事評価の仕組み

「こんなことを聞いたら、正社員になりたいとがっついているように見えるかな」と心配になるかもしれません。でも、聞いたことで印象が悪くなることはありません。

採用担当だった私から見ると、入社後のことを具体的に考えている人だと受け取っていました。

もし「制度はあるけれど、登用された人はいない」という答えだったら、2-3で見た会社の仕組みの側の問題かもしれません。

そのときは、6章の見抜き方を参考に、移ることも考えてみてください。

5-2. 勤怠の安定を「記録」で見せる

3-2でお話ししたとおり、登用された人に共通していたのは、まず勤務が安定していることでした。これを、印象ではなく記録で示せるようにしておきます。

具体的には、次のようなものです。

  • 出勤・遅刻・早退・欠勤の記録(会社の勤怠の記録をそのまま見返せるようにしておく)
  • 通院の日をあらかじめ伝えて、予定どおりに休んでいること
  • 毎日の体調を簡単につけた記録(睡眠時間や気分を、数字や記号で残す)

体調の記録は、就労移行支援などでもよく使われる方法です。調子を崩しかけたときに、自分でも早めに気づけるようになります。

5-3. 配慮してほしいことと、自分なりの対処法を見える形にしておく

3-4でお話しした「見える化」の具体的なやり方です。私が2回目の休職から職場に戻るときに作ったのは、「症状別対処法」という1枚のリストでした。

作り方は、支援機関の担当者のアドバイスを受けたものです。書き出したのは、次の3つでした。

  • 双極性障害の自分の状態を、躁・軽躁・平常時・軽うつ・うつの5段階に分けたもの
  • それぞれの段階でよく出る行動や、考え方のくせ
  • そのときの対処法

このリストを上長と支援員に渡しておいたことで、周りが「あ、今ちょっと軽躁っぽいかも」と気づいてくれるようになりました。

自分では気づけない変化を、周りが先に見つけてくれるんです。あわせて、週1回の上長との面談(1on1)と支援員との面談で、細かな変化もその都度報告していました。

これは復職のときに作ったものですが、契約社員として登用を目指している段階でも、そのまま使えます。

配慮してほしいことを書面にまとめる方法は、ナビゲーションブックの書き方と記入例で詳しくお話ししています。

5-4. 評価面談で正社員を希望すると伝えるときの言い方

正社員を目指しているなら、その気持ちは言葉にして伝えておいてください。黙って待っているだけでは、上司も本人の希望が分からないことがあるからです。

伝えるときのコツは、「長く働きたい」という気持ちとセットにすることです。たとえば、次のような言い方があります。

この会社で長く働きたいと考えています。将来的に正社員を目指したいので、そのために今の自分に足りないことがあれば教えていただけますか。

この言い方なら、要求ではなく相談になります。足りないことを聞いておけば、次の評価までに何をすればよいかもはっきりしますよ。

評価面談の機会がない会社なら、契約更新の面談のときに伝えてもかまいません。5-2の記録や5-3のリストがあれば、話もしやすくなるはずです。

5-5. 5年を超えると「無期雇用」に変えられるルールを知っておく

期間の決まった契約で働いている人には、知っておいてほしいルールがあります。「無期転換ルール」です。

  • 同じ会社で、期間の決まった契約が更新されて通算5年を超えたら、本人が申し込むことで、期間の定めのない契約(無期契約)に変えられる
  • 会社は、この申し込みを断れない
  • 申し込みは、後のトラブルを防ぐために書面で行うのがよいとされている

ただし、無期契約に変わっても、正社員になるわけではありません。

仕事の内容や給料などの条件は、特に決まりがなければ、それまでの契約と同じままです。

1-2で整理した「期間の定めはないけれど、正社員ではない」働き方に変わる、ということですね。

(出典:厚生労働省・都道府県労働局「無期転換ルール」リーフレット(PDF))

それでも、契約が更新されないかもしれないという不安は小さくなります。

契約社員として5年目が近づいているなら、自分の契約が通算で何年になるかを確かめておいてください。

詳しい扱いは、会社の人事か、お住まいの都道府県の労働局にご確認ください。

ここまでが、今の会社で登用を目指すときの進め方です。一方で、「今の会社では難しそうだ」と感じた人もいると思います。

次の章では、本当に正社員になれる会社の見抜き方をお話しします。

6. 求人票と面接で「本当に正社員になれる会社」を見抜く方法

明るい机に置かれた、付箋の付いた冊子と黄色のマーカー

これから転職する人や、今の会社から移ることを考えている人に向けて、正社員になれる会社の見抜き方をお話しします。

採用する側にいた私から見て、「ここを見ておけば入社後のずれが減る」というポイントに絞りました。

6-1. 「正社員登用あり」と「登用の実績あり」は別のもの

求人票に「正社員登用あり」と書かれていても、それだけで安心するのは早いんです。制度があることと、実際に登用された人がいることは別だからです。

ハローワークの求人票では、正社員以外の求人に「正社員登用」の欄があり、「あり」の場合は過去3年間に登用された人数も書くようになっています。

ここが「0名」なら、制度はあっても、ここ3年は誰も登用されていないということです。

(出典:ハローワーク池袋「求人票追加項目確認のお願い」(PDF))

2-3で紹介した知恵袋の相談のように、「登用制度は検討中」という会社もあります。

求人票の言葉より、過去に何人が、入社から何年くらいで登用されたかという数字を見てください。

6-2. 求人票で見るべき5つの項目

求人票で見てほしいのは、次の5つです。

項目見るところ
雇用形態正社員か、契約社員・パートか。正社員以外なら、登用の欄と過去3年間の実績
契約期間と更新契約は何か月ごとか。更新は「原則更新」か「条件つき」か。更新の上限(通算の年数や回数)があるか
昇給「あり」か。金額や率の実績が書かれているか
賞与「あり」か。契約社員にも出るか、前年の実績はどのくらいか
福利厚生通院のための休暇、社員食堂など、毎日の働きやすさにつながる制度

特に気をつけてほしいのが、契約の更新の上限です。

2024年4月から、会社は期間の決まった契約を結ぶときや更新するときに、更新の上限があるかどうかと、その内容を示すことになりました。

「通算3年まで」のような上限があると、正社員への登用や、5-5でお話しした無期転換の前に、契約が終わってしまうこともあります。

(出典:静岡労働局「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」)

福利厚生は見落とされがちですが、私の会社のように社員食堂があると、額面の給料だけでは見えない、健康を保つための支えになります。

長く働くつもりなら、ここも見ておいて損はありませんよ。

6-3. 面接や会社見学で、印象を悪くせずに聞く方法

求人票で分からないことは、面接や会社見学で聞けます。5-1でお話ししたとおり、評価の仕組みなどを聞いても印象は悪くなりません。

ポイントは聞き方で、「長く働きたいから知りたい」という前置きをつけると、自然な質問になります。

たとえば、次のような聞き方があります。

  • 「長く働きたいと考えているので、契約社員から正社員になられた方がどのくらいいらっしゃるか、教えていただけますか」
  • 「正社員への登用は、どのような時期に、どのような形で判断されることが多いですか」
  • 「入社後の目標や評価は、どのように決まっていくのでしょうか」

会社見学や説明会、入社前の実習、トライアル雇用(本採用の前に、一定期間試しに働く制度)がある会社なら、ぜひ参加してください。

実際に働いている人の様子を見られると、求人票だけでは分からない職場の雰囲気がつかめます。

面接での答え方や逆質問(面接の最後に応募者から質問する時間)の考え方は、特例子会社の面接で聞かれる質問と回答例にまとめています。

6-4. 最初から正社員の求人を探すなら、転職エージェントで条件を絞る

最初から正社員の求人を探したいなら、障害者専門の転職エージェント(求人の紹介から応募、面接の日程の調整までを手伝ってくれるサービス)を使うのが近道です。

エージェントを使うと、「正社員の求人だけ」「登用の実績がある会社」のように条件を伝えて探してもらえます。

過去の登用の実績や、配属される部署の雰囲気など、自分では聞きにくいことも、担当者を通じて確かめてもらえるのが強みです。

自分で「正社員になった人はいますか?」と聞くのは、やっぱり少し勇気がいります……。

KEN-3
KEN-3

その気持ち、分かります。そういうときこそ、エージェントの担当者に代わりに確かめてもらうといいんです。人事をしていたころ、私もエージェントの担当者とは、求人や見学会のことでよくやりとりをしていましたよ。

障害者専門の転職エージェントで、私がおすすめしているのは次の2つです。

dodaチャレンジがおすすめな人

  • 転職するかまだ決めていなくて、まずは相談だけしたい人
  • 地方に住んでいて、オンラインや電話で相談したい人
  • 週20時間・30時間などの短時間勤務も含めて考えたい人

転職するかどうか決めていない段階でも、相談から始められます。

※dodaチャレンジは、パーソルグループのパーソルダイバース株式会社が運営しています。相談・応募から転職が決まるかどうかまで、料金はかからないと公式サイトに書かれています。求人の紹介は障害者手帳を持っている人が対象です(申請中でも、求人によっては対象になる場合があります)。キャリアカウンセリング(面談)は、地方に住んでいる人もオンラインや電話で受けられると案内されています。

アットジーピー【atGP】がおすすめな人

  • 転職のプロに相談しながら進めたい人
  • 正社員の求人や、登用の実績がある会社を一緒に探してほしい人
  • 「正社員になった人はいますか?」と自分では聞きにくい人

障害者の就職・転職に詳しいキャリアプランナーに、まずは相談してみてください。

※atGPは、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する障害者専門の転職サービスです。サービスの利用は無料と、公式サイトに書かれています。

2つの違いや使い分けは、atGPとdodaチャレンジを本音で比べた記事で詳しく書いています。

7. 正社員にこだわる? こだわらない? 自分に合う働き方の決め方

窓辺に並んだ、背の高さが違う2つの花瓶

ここまで、正社員になる方法をお話ししてきました。

ただ、正社員がいつでも一番いい答えとは限りません。

この章では、正社員にこだわるかどうかを決めるための材料をお伝えします。

7-1. 障害者雇用で正社員になるメリット・デメリット

正社員になると、給料や立場は安定しやすくなります。一方で、求められることが増える場合もあります。

メリットデメリット
賞与や昇給の仕組みの対象になりやすい求められる仕事の質や量が上がることがある
契約更新のたびに不安を感じなくてよくなるフルタイム勤務が前提になることが多い
休職などのときにも、立場の安心がある会社によっては、異動や転勤の対象になる
KEN-3
KEN-3

私自身が正社員になって感じたメリットは、4-3と4-4でお話ししたとおりです。デメリットのほうで言うと、給料の水準が高い会社ほど、一般雇用と変わらない仕事の質と量を求められることが、ほとんどの場合セットになっていると感じています。

正社員になることで何を得て、何を引き受けるのか。表を見ながら、自分にとっての重さを比べてみてください。

7-2. 契約社員でも長く安定して働ける会社はある

契約社員だからといって、すぐに不安定とは限りません。

1-2で見たように、期間の定めのない契約で働いている正社員以外の人もいますし、5-5の無期転換ルールもあります。

契約の更新が当たり前のように続いている職場もあるんです。

特例子会社のように、障害のある人が長く働くことを前提にした職場もあります。

通院のための休暇や、体調に合わせた配置などの配慮を受けやすい環境は、雇用形態の名前とは別の価値があるんですよね。

特例子会社の働き方は、特例子会社のリアルで詳しくお話ししています。

結局は、自分がどこを目指したいか、どんな環境で働きたいかで決まります。あなたは、次のどちらに近いでしょうか。

  • 給料は控えめでも、安定して続けられることや配慮を大事にしたい
  • 体調が安定しているから、どんどん上を目指したい

7-3. 給料は雇用形態だけでなく、賞与なども含めた年収全体で比べる

給料を比べるときは、「正社員か契約社員か」という名前より、賞与も含めた年収全体で比べてください。

契約社員でも賞与が出る会社もあれば、正社員でも賞与が少ない会社もあるからです。

さらに、障害年金を受け取れる場合は、給料と合わせた「トータル」で考える視点もあります。

私自身、障害者雇用に移って最初の給料は一般雇用のころより下がりましたが、障害年金と合わせて考えると、最初から同じくらいになる場合もあります。

この考え方は、障害者雇用のデメリット7つで詳しく書いています。

障害年金を受け取れるかどうかは、保険料を納めてきた状況や、障害の状態などによって決まります。

働いているかどうかが判断にかかわることもあるので、詳しくは日本年金機構か、お近くの年金事務所にご確認ください。

(出典:日本年金機構「障害年金」)

7-4. まだフルタイムが不安なら、先に働く土台を作る

「正社員を目指したいけれど、まだフルタイムで働き続ける自信がない」。そんな人は、急いで求人に応募するより、先に働く土台を作るのも一つの方法です。

その選択肢のひとつが、就労移行支援です。

障害のある人が一般の会社で働けるように、通所しながら訓練や就職活動の手伝いを受けられる福祉サービスで、利用できる期間は原則2年までです。

私が入社したときからフルタイムで働けた理由も、2-2でお話ししたとおり、ここにありました。

(出典:厚生労働省 障害福祉サービスの就労支援に関する資料(PDF))

毎日通う生活を続けられた記録は、3章でお話しした「勤務の安定」を、入社前から示す材料にもなります。

atGPジョブトレがおすすめな人

  • うつ症状・発達障害など、自分の障害に合ったコースで訓練したい人
  • フルタイムで働く前に、毎日通う練習をしたい人
  • まずは見学して、雰囲気を確かめたい人

相談・見学は無料で申し込めます。

※atGPと同じ株式会社ゼネラルパートナーズが運営しています。コースは、うつ症状・発達障害・統合失調症・聴覚障害・難病の5つ。事業所は、首都圏(秋葉原・お茶の水・大手町・横浜)と、東海・関西(名古屋・梅田)にあります(公式サイトより)。

ミラトレがおすすめな人

  • 職場を再現した環境で、働く練習をしたい人
  • 実際の仕事に近い形で、自分に合う働き方を確かめたい人
  • 正社員を目指す前に、働く土台を作りたい人

見学は、公式サイトから申し込めます。

※パーソルグループが運営する就労移行支援です。

事業所を見学するときに何を聞けばよいかは、就労移行支援の見学で聞く質問20にまとめています。

正社員を目指す人も、まずは土台から作る人も、ここまでで判断の材料はそろったと思います。最後に、よく寄せられる質問にお答えします。

8. よくある質問

木のトレーに置かれたティーポットと湯気の立つカップ

最後に、障害者雇用の正社員について、知恵袋やGoogleの「関連する質問」でよく見かける疑問にお答えします。

本文で詳しくふれたものは、短くまとめて参照先を示しています。

Q1. 障害者雇用で正社員になれる確率は?

1-1で見たとおり、国の調査では、障害者雇用で働く精神障害のある人の約3人に1人が正社員です。ただ、実際の確率は会社によって大きく変わります。

登用の実績が毎年ある会社もあれば、ほとんどない会社もあるからです。全体の割合より、応募する会社の過去3年間の登用の実績(6-1)を見てください。

Q2. 契約社員から正社員まで、何年くらいかかる?

KEN-3
KEN-3

私の場合は1年でした。採用担当として見てきた感覚では、1〜2年くらいの人が多かったと思います。ただ、これは私の会社での一例です。今の会社での目安は、5-1の方法で上司や人事に確かめるのがいちばん確実ですよ。

Q3. 短時間勤務でも正社員になれる?

なれる場合があります。1-4でふれた国の助成金でも、短時間正社員(フルタイムより短い時間で働く正社員)への切り替えが対象に含まれています。

ただし、その仕組みがあるかどうかは会社しだいです。短い時間で働きたいなら、面接や会社見学で「短時間の正社員という働き方はありますか」と聞いてみてください。

Q4. 「正社員登用前提の契約社員」を提案されたら、受けるべき?

「前提」は、必ず正社員になれるという約束ではありません。受けるかどうかを決める前に、次の3つを確かめておくと安心です。

  • 正社員になるための条件と、判断される時期
  • これまでに同じ形で入社して、正社員になった人がいるか
  • 契約の更新に上限があるか(6-2)

答えがはっきりしていて、実績もあるなら、前向きに考えてよい提案だと思います。反対に、条件も実績もあいまいなら、ほかの求人と比べてから決めても遅くはありません。

Q5. 契約社員5年目でも正社員になれない。辞めるべき?

すぐに辞めると決める前に、次の順番で考えてみてください。

  • 見送られている理由を上司に聞く(3-3で見たような、手を打てる理由かもしれません)
  • 通算5年を超えていれば、無期契約に変える申し込みができる(5-5)
  • 理由があいまい、または登用の実績そのものがないなら、実績のある会社へ移ることも考える(6章)

辞めるかどうか迷ったときの考え方は、特例子会社を辞めたい人のその後でもお話ししています。

Q6. 一般枠(障害を伝えないクローズ就労)で応募したほうが、正社員になりやすい?

正社員の求人の数だけを見れば、一般枠のほうが多い傾向があります。ただし、障害を伝えないで働くと、体調を崩したときに配慮を求めにくくなります。

私は一般雇用の3社すべてで体調を崩しました。正社員になれても、続けられなければ意味がありません。

障害を伝えて働くか、伝えずに働くかの選び方は、atGPとdodaチャレンジを本音で比べた記事の4章で詳しく書いています。

Q7. 正社員になったら、配慮は受けられなくなる?

受けられなくなることはありません。

会社は、採用したあとの障害のある労働者に対して、合理的配慮(障害のある人が働きやすいように、会社が行う調整や工夫)を行うことになっています。

国の指針には、正社員かどうかで分ける決まりはありません。

(出典:厚生労働省「障害者差別禁止指針」「合理的配慮指針」(PDF))

私自身、正社員になって10年以上たってからの2回目の休職のあとも、部署の異動と勤務地の変更という配慮を受けました(4-4)。

配慮の中身は、本人と会社の話し合いで決まっていきます。正社員になってからも、困ったことは遠慮せずに伝えてくださいね。

まとめ|「なれない」の理由を切り分ければ、次の一歩が見えてくる

朝の光の中、窓辺で葉を広げる鉢植えの植物

障害者雇用でも、正社員にはなれます。

ただし、「なれない」と感じる理由には、自分の側にあるものと、会社の仕組みの側にあるものがあります。この記事のポイントを振り返っておきますね。

  • 精神障害のある人で正社員は約3人に1人。契約社員から始めて、正社員に登用される人も実際にいる
  • 登用で見られていたのは、能力より「勤務の安定」と「部署に合っているか」
  • 今の会社で目指すなら、登用の条件・時期・実績を確かめ、勤怠と対処法を見える形にする
  • 会社を選ぶなら、「登用あり」の言葉より、過去3年間の登用の実績と、契約の更新の上限を見る
  • 正社員がいつでも一番とは限らない。給料は年収全体で、働きやすさも含めて比べる

私は半年ごとの契約社員から始めて、1年後に正社員になり、13年以上働き続けてきました。正社員になれたのは、何か特別な力があったからではありません。

体調を整えて、毎日安定して働く。その積み重ねを、会社がきちんと見てくれる職場だったからです。

もし今の会社に登用の仕組みや実績がないなら、あなたの努力が足りないわけではありません。登用の実績がある会社を探すことも、立派な選択肢です。

自分だけで求人を見比べるのが大変なら、障害者専門の転職エージェントに条件を伝えて、一緒に探してもらってください。

●atGPとdodaチャレンジのどちらを使うか迷ったら、以下の記事を参考にしてみてください↓

プロフィール
KEN-3

↑「KEN-3」クリックでプロフィールページへ。

障害者雇用13年目|特例子会社の元採用担当

一般雇用で働いていた頃にうつと双極性障害を発症し、精神障害者保健福祉手帳を取得。就労移行支援を経て、大手企業の特例子会社で13年働いています。当事者として働き、採用する側としても見てきました。

制度の解説ではなく、現場で本当に起きていることを書いています。
かつての自分と同じところで立ち止まっている人に、判断材料が届けば嬉しいです。

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