はじめに|休職は「キャリアの終わり」ではない
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「休職したらもう終わりだ」——そう感じたことはありませんか?私は休職を経験した当事者であり、同時に人事・採用担当として休職者を何人も見送り、迎えてきた人間でもあります。その両方の立場から、はっきり言えることがひとつあるんです。休職は終わりではなく、働き続けるための「回復の時間」なんです。
実際のデータを見ても、それは裏付けられています。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)傘下の障害者職業総合センターが、2019年に国内の上場企業3,740社を対象に行った調査によると、過去3年間にメンタルヘルス不調で休職した社員のうち「7〜8割程度が復職できた」と答えた企業が24.1%でもっとも多く、「ほとんど全員(9割程度以上)復職できた」という企業も22.6%ありました。つまり半数近くの企業で、休んだ人の大半が職場に戻れているというのが実態です(出典:障害者職業総合センターNIVR「職場復帰支援の実態等に関する調査研究」)。
少し自己紹介させてください。私は一般雇用で働いていた頃にうつ状態となり、その後、双極性障害(気分が高まる躁状態と落ち込むうつ状態を繰り返す精神疾患)と診断されました。精神障害者手帳を取得し、就労移行支援(障害や病気のある人が一般企業への就職を目指して訓練を受けられる福祉サービス)に通ったあと、大手企業の特例子会社(障害者雇用を促進するために親会社が設立する子会社)に採用され、今年で勤続13年になります。
この13年間で、総務・経理・店舗運営・社員窓口・新人教育やメンター、さらには親会社のプロジェクトまで、いろいろな部署を経験させてもらいました。中でも人事・採用を担当していた時期があり、休職者を送り出す側にも、迎える側にも回ったことがあります。当事者と採用担当、両方の視点を持っている人はそう多くないと自分でも思っています。
正直に言うと、13年間ずっと順風満帆だったわけではありません。40代後半で、私自身も4ヶ月ほど休職しています。長年安定していたことへの慢心もあったと思いますし、今振り返れば双極性障害特有の躁状態が出ていたのかもしれません。この時の詳しい経緯は、また後の章でじっくりお話しします。
この記事では、休職から復職までの一般的な流れやお金の制度といった基礎知識に加えて、当事者としての実体験・体験談、そして人事担当として見てきた「復職がうまくいく人・いかない人」の違いまで、両方の立場からお届けします。今まさに休職中で不安を抱えている方にも、休職者を受け入れる立場の方にも、きっと役立つはずです。
まずは、休職を考え始めてから復職するまでの、基本的な流れから一緒に見ていきましょう。
1|休職から復職までの基本的な流れ

休職と聞くと、何から手をつければいいのか分からず不安になりますよね。私自身、40代後半で実際に4ヶ月の休職を経験しているので、その戸惑いはよく分かるんです。この章では、休職を決める段階から復職するまでの一般的な流れを、私の実体験も交えながら順番に見ていきます。
1-1|休職を決めるまでのステップ(就業規則確認→受診→申請)
休職の第一歩は、勤務先の就業規則を確認することです。休職は法律で一律に定められた制度ではなく、企業ごとの福利厚生として就業規則に定められているものなんですよね(出典:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」)。休職できる期間や休職中の給与の扱いは、勤務先ごとにかなり差があるので、まずは自分の職場のルールを知ることから始まります。
次のステップは医師の受診です。「まだ大丈夫」と思っていても、専門家の目で見ると休職が必要な状態、というケースは少なくありません。
正直なところ、私自身がまさにそのパターンでした。特例子会社に入社して10年以上が経ち、様々な部署を経験して自信もついてきた40代後半、気づけば一般雇用の頃に近い業務量をこなすようになっていたんです。体調が安定していたこともあり服薬を忘れることも増えていて、今思えば双極性障害特有の躁状態だったのかもしれません。
そこに家庭の事情や仕事の忙しさが重なり、今度は一気にうつ状態へ。結局、自分では戻せないところまで体調を崩してしまいました。
診断を受けたら、いよいよ会社への申請です。一般的には、上司や人事担当への報告→診断書の提出→休職の正式な承認、という順番で進みます。私の場合は人事・採用を担当していた経験があったので手続き自体に戸惑いはなかったのですが、初めて休職する人にとっては、ここが一番のハードルになりやすいところだと思います。
1-2|休職中に意識すべきこと(休養期→生活リズム期→準備期の3段階)
休職中は、大きく「休養期」「生活リズム期」「準備期」の3段階で心身を戻していくのが一般的な流れです。焦って途中の段階を飛ばしてしまうと、かえって回復が遅れることがあるんですよね。
私の4ヶ月の休職は、まさにこの3段階そのものでした。最初の休養期は、とにかく何もしないことに徹した1ヶ月です。ストレスで悪いことばかり考えてしまい、起き上がるのもしんどくて、寝てばかりの日々でした。体重も10kgほど落ちてしまい、歩くことすら大変だったのを覚えています。
主治医からは「薬を調整するので、2〜3週間から1ヶ月くらいで徐々に戻ってくるはずです」と言われました。実際、薬の効果で食欲が出てきたのをきっかけに、無理にでも朝起きて日光に当たり、足の筋肉が衰えないように歩くことを始めたんです。すると本当に1ヶ月弱で意欲が湧いてくるのを感じました。
ここからが生活リズム期です。毎日のウォーキングを少しずつ伸ばして1万歩まで増やし、朝も規則正しく起きられるようになっていきました。生活リズムが整ってくると、次に頭をよぎるのが「このあと、どうやって仕事に戻していくか」という準備期の課題です。
私の場合、そこで考えたのが通勤とフルタイム勤務への戻し方でした。この準備期にどんな手を打ったかは、リワーク(職場復帰に向けたリハビリプログラム)や就労移行支援の話とあわせて、後の章で詳しくお伝えします。
1-3|復職の判断から試し出勤・職場復帰までの流れ
準備期を経たあとは、いよいよ復職の判断フェーズに入ります。厚生労働省の手引きでは、①休業開始とケア、②主治医による復職可能の判断、③職場復帰の可否判断と支援プランの作成、④最終的な職場復帰の決定、⑤復職後のフォローアップという5つの流れが示されています(出典:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」)。
まず主治医が「復職可能」と判断し、診断書を作成します。そのうえで産業医(企業に所属し、社員の健康管理を担う医師)との面談があり、業務内容や通勤への耐性を踏まえた意見が会社に伝えられる、という流れです。
この段階でよく使われるのが「試し出勤」の制度です。
- 模擬出勤:勤務時間帯にデイケアなどで軽作業をしたり、図書館で時間を過ごしたりする
- 通勤訓練:自宅から職場付近まで実際に移動し、しばらく過ごしてから帰る
- 試し出勤:本来の職場に、一定期間試験的に継続して出勤してみる
制度の有無や内容は職場ごとに違うので、自分の会社にどんな仕組みがあるか、人事に確認してみてください。
こうしたステップを経て、会社が最終的な復職の可否を判断します。復職が決まった後も、上司や産業医との定期的な面談でフォローが続くケースが一般的です。私自身、復職後のフォロー体制があったからこそ、無理なく仕事に戻れた実感があります。
2|人事・採用担当として見てきた「復職がうまくいく人・いかない人」の違い

「自分は本当に戻れるんだろうか」——休職中、そんな疑問が頭をよぎったことはありませんか?私は障害当事者として休職を経験した一方で、人事・採用担当として休職者を送り出し、迎える側にも立ってきました。この章では、13年間で見てきた「復職がうまくいく人・いかない人」の違いを、体験談に基づく本音ベースでお話しします。
2-1|復職が長引きやすい人に共通する3つの特徴
復職が長引きやすい人には、「焦る」「一人で抱え込む」「サインを軽視する」という3つの共通点があるんですよね。
- 焦って早く戻ろうとする:まだ生活リズムが整いきっていない段階で復職を急ぎ、結果的に再休職してしまう
- 一人で抱え込む:不調のサインを誰にも相談せず、悪化してから初めて周囲が気づく
- サインを軽視する:「これくらい大丈夫」と自己判断し、通院や服薬を後回しにする
なぜこの3つが長引きの原因になるのか。理由はシンプルで、どれも「回復のペースを自分でコントロールできなくなる」状態を招くからです。
正直に言うと、私自身が3つ目のパターンにまさに当てはまっていました。10年以上勤務して自信がついてきた頃、服薬を忘れることが増えていたのに「まあ大丈夫だろう」と流してしまっていたんです。その慢心が、結果的に4ヶ月の休職につながりました。
人事の立場から見ていても、この3つのどれかに当てはまる人ほど、復職後にまた体調を崩すケースが多い印象があります。次の項目では、逆にスムーズに戻れた人の特徴を見ていきましょう。
2-2|スムーズに戻れた人がやっていたこと
スムーズに復職できた人に共通していたのは、「自分の状態を見える化して、周囲と共有していた」という点です。
私自身、4ヶ月の休職を経て復職する際、支援機関の担当者のアドバイスを受けてひとつの工夫をしました。双極性障害の自分の特性を、躁・軽躁・平常時・軽うつ・うつという5段階に分類し、それぞれの段階でよく出る行動や思考のパターン、そしてその対処法をリスト化したんです。
このリストを上長と支援員に渡しておいたことで、周囲が「あ、今ちょっと軽躁っぽいかも」と気づいてくれる環境ができました。加えて、週1回の上長との1on1と支援員との面談で、細かな変化もそのつど報告するようにしていたんです。
もうひとつ効いたのが、準備期間の長さでした。当初は1ヶ月のリワークで復職するイメージでしたが、実際には2ヶ月に延ばしています。結果的に、この2ヶ月があったからこそ、復職初日からいきなりフルタイム勤務でスタートできました。焦って短縮していたら、こうはいかなかったと思います。
会社側から見ても、こうして「見える化」してくれる人は圧倒的に安心材料が多いんですよね。次は、その会社側が実際にどこを見て判断しているのかをお話しします。
2-3|会社が復職判断で実際に見ているポイント
会社が復職判断で見ているのは、医師の診断書だけではありません。障害者職業総合センター(NIVR)が上場企業457社を対象に行った調査でも、復職判断の条件として「復職意思」「生活リズム」「意欲・思考の回復」「試し出勤」「試し勤務」「医師の判断」など複数の観点を組み合わせている企業が多いという結果が出ています(出典:障害者職業総合センターNIVR「職場復帰支援の実態等に関する調査研究」)。
つまり会社側は、診断書1枚で「はい、大丈夫ですね」とは判断していないんです。人事の立場から本音を言うと、一番気になるのは「また同じ理由で休まれたらどうしよう」という不安なんですよね。
だからこそ、本人が自分の状態を客観的に説明できているか、再発防止の具体策を持っているかが、判断材料として重視されます。先ほどお伝えした症状の5段階リストは、まさにこの不安に応える材料になっていたと思います。
私の場合、復職にあたって部署異動もしてもらいました。休職前は業務量が多く精神的な負担も大きい部署にいたのですが、入社当初から6年間勤務して自信を取り戻すきっかけになった部署へ異動させてもらい、勤務地も自宅から近い拠点に変えてもらえたんです。これは特例子会社だからこその配慮だと感じていますが、一般企業でも業務内容の調整や勤務時間の短縮といった形で似た対応が取られることは珍しくありません。
3|休職中〜復職前に使える支援制度

「リワークって聞くけど、結局何をするの?」「就労移行支援は退職した人が行くところじゃないの?」——休職中にこの2つの言葉を調べて、混乱した経験はありませんか?実は私自身、この2つを両方使ったことがあります。この章では、それぞれの違いと、在職中・退職後でどちらを選ぶべきかを、実体験を交えてお伝えします。
3-1|職場リワーク・医療リワーク・就労移行支援の違い(比較表)
休職中に使える職場復帰の準備制度は、大きく分けて3種類あります。まずはそれぞれの特徴を、表で整理してみます。
| 種類 | 運営主体 | 対象者 | 期間の目安 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 職場リワーク | 企業自身 | 自社の休職中の社員のみ | 企業ごとにまちまち | 基本無料(給与規定による) |
| 医療リワーク | 精神科・心療内科などの医療機関 | 休職中の人(在職中限定) | 数ヶ月程度の通所型が中心 | 健康保険3割負担、自立支援医療なら1割 |
| 就労移行支援 | 市区町村が指定する障害福祉サービス事業所 | 原則、退職後または一般就労を目指す人 | 標準6ヶ月〜1年半(最大2年) | 世帯所得に応じて0円〜37,200円 |
こうして並べると、就労移行支援だけ少し毛色が違うのがわかると思います。もともとは一般企業への就職を目指す人向けの福祉サービスで、在職中の人が使うことは想定されていないんですよね。
でも実は私、在職中にこの就労移行支援を「短期リワーク」として使ったことがあるんです。40代後半で4ヶ月の休職をした際、まさにこの制度を活用しました。次の項目で、なぜそれが可能だったのか、詳しくお話しします。
3-2|在職中の人・退職後の人、それぞれに向く制度の選び方
在職中の人は職場リワークか医療リワークが基本の選択肢で、退職後の人(または一般雇用から障害者雇用へ移る途中の人)は就労移行支援が使いやすい選択肢になります。
実は私自身、就労移行支援を2回利用しています。1回目は、一般雇用から障害者雇用に移る際です。この時は退職していたので、標準の6ヶ月〜1年半という期間をそのまま使い、特に問題なく通所できました。
一方、2回目は在職中でした。40代後半の4ヶ月の休職の際、生活リズムが整ってきたタイミングで「通勤とフルタイム勤務にどう戻すか」を考え、以前通った就労移行支援を思い出したんです。ただ在職中の利用には、通常とは違うハードルがありました。
厚生労働省の通知では、休職中の人が就労移行支援を使える条件として、①勤務先や地域の支援機関による復職支援が見込めないこと、②本人が復職を希望し、勤務先と主治医が支援利用は復職につながると判断していること、③市区町村が福祉サービスの利用がより効果的だと判断すること、という3つが示されています(出典:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A」)。つまり、在職中の利用はあくまで例外扱いなんです。
さらに私の場合、期間の短さも壁になりました。通常の就労移行支援は6ヶ月〜1年半を前提としているため、1ヶ月程度の短期利用だと、支援計画をきちんと立てられない、復職後の定着支援も含めて考えると事業所側が受け入れにくい、ということを初めて知りました。
ここで役に立ったのが、人事・採用をしていた時からのつながりでした。取引のあった就労移行支援事業所の担当者を知っていたこともあり、最低でも2ヶ月という条件でリワークとして受け入れてもらえたんです。この経験から言えるのは、まず候補の事業所に直接、電話や説明会で受け入れ可否を確認してみることです。
事業所を選ぶ際、私が条件にしたのは2つでした。ひとつは通勤の練習になるよう、30分ほど電車に乗って通える場所であること。もうひとつは、これまで学んだことのなかったIT・Web系のカリキュラムがある事業所であること。これは人事・採用の経験があったからこそ、候補をある程度絞り込めたポイントだったと思います。※参考として、この章の最後に案内リンクを載せてます
利用にあたっては、市区町村の障がい者サービス課での手続きも必要でした。私の自治体で求められた書類は次の4つです。
- 勘案事項整理票
- 主治医の診断書
- 勤務先からの意見書
- お薬手帳
費用については、世帯の所得区分によって上限が決まっています。厚生労働省の資料によると、負担上限月額は次の4区分です(出典:厚生労働省「障害者の利用者負担」)。
- 生活保護受給世帯:0円
- 市町村民税非課税世帯:0円
- 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満、いわゆる「一般1」):9,300円
- それ以外の世帯(「一般2」):37,200円
私は共働きで市町村民税課税世帯だったので、「一般1」の9,300円が毎月かかりました。それでも、毎日のプログラムと通勤の練習ができることを考えると、十分に見合う金額だったと感じています。
ここまで制度の概要をお伝えしましたが、対象条件や実際のカリキュラムは事業所によって細かく異なります。気になる方は、個別相談や見学で直接確認してみるのが一番確実だと思います。
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4|お金の不安を減らす|傷病手当金・社会保険料・税金の基礎知識【2026年最新】

休職中、一番の不安はお金のことだったりしませんか?私自身、4ヶ月の休職中に「このまま生活が回るのか」と何度も計算した覚えがあります。この章では、傷病手当金の仕組みから、休職中も発生する社会保険料・住民税、そして復職した年に見落としがちな「ふるさと納税」の落とし穴まで、まとめてお伝えします。
4-1|傷病手当金の受給条件と支給額の目安
実は傷病手当金(健康保険から支給される、休業中の生活を支える給付金)を使えば、給与のおよそ3分の2を最長1年6ヶ月受け取れるんです。
受給には次の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガによる療養であること
- 療養のため、労務に就けない状態であること
- 連続する3日間の待期期間を含み、4日以上仕事を休んでいること
- 休んでいる期間について、給与の支払いがないこと(一部支給の場合は差額が調整されます)
支給額の計算式は、「支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額(社会保険料や傷病手当金の計算のもとになる、給与を区切りのよい額に区分したもの)を平均した額÷30×2/3」です。仮に平均の標準報酬月額が30万円だった場合、1日あたり6,666円、1ヶ月ではおよそ20万円が目安になります。
ここで押さえておきたいのが、支給期間は通算で1年6ヶ月という点です。2022年1月の制度改正で、途中に就業した期間があっても、実際に支給を受けた日数だけを通算してカウントする方式に変わりました。つまり、一度復職してまた休んでも、残りの期間分は再び受け取れるということなんですよね。
もうひとつ、加入期間が12ヶ月に満たない人向けの計算に使う参照額も、令和7年4月1日以降の支給開始分から30万円→32万円に引き上げられています(出典:同上、協会けんぽ「傷病手当金」)。入社間もないタイミングで休職した人にとっては、地味に大きい変更点だと思います。
4-2|休職中も発生する社会保険料・住民税の取り扱い
休職中も社会保険料は原則そのまま発生し続けますし、住民税も普段通り請求されます。給与がゼロだからといって、支払いまでゼロになるわけではないんです。
健康保険料や厚生年金保険料は、休職前に決まった標準報酬月額をもとに計算されるので、実際の給与が0円でも金額は変わりません。一方の住民税は、前年の所得に対する後払いの税金なので、今年の収入が減ったこととは連動しないんですよね。
給与天引きができない分をどう払うかは、会社によって対応が分かれます。会社がいったん立て替えて復職後にまとめて請求する方法や、休職中の本人に毎月請求書を送って振り込んでもらう方法が一般的です。長期の休職になると、住民税を特別徴収(給与天引きで納める方法)から普通徴収(自分で納付書を使って納める方法)に切り替える会社も少なくありません。
ちなみに、傷病手当金そのものは非課税なので、受け取った分に所得税や住民税がかかることはありません。ただ、この「非課税」という性質が、実は次にお話しする落とし穴の原因にもなっているんです。
4-3|復職した年の「ふるさと納税」で注意すべきこと(体験談)
実はこれ、休職で年収が下がった年ほど気をつけたいポイントなんです。ふるさと納税(自治体に寄付をすると返礼品がもらえ、寄付額から自己負担2,000円を除いた分が税金から控除される制度)の上限額は、その年の収入に合わせて下がるからです。前年の感覚のまま寄付してしまうと、自己負担が発生してしまいます。
理由はシンプルで、上限額はその年の課税所得をもとに計算されるからです。前の項目でお伝えした通り、傷病手当金は非課税所得なので、この上限額の計算には含まれません(出典:国税庁「No.2011 課税される所得と非課税所得」)。休職で給与収入が減り、そのぶんを傷病手当金でまかなった年は、課税所得自体が下がるので、上限額もそれに合わせて下がってしまうというわけです。
正直に告白すると、私自身がこの失敗をやらかしています。休職で年収が下がった年に、前年並みの上限額ぎりぎりまで寄付してしまったんですよね。翌年届いた特別徴収税額の決定通知書に記載された寄付金税額控除額を見て、「あれ、思ったよりずいぶん少ないな」と最初は不思議に思い、そこでようやく上限オーバーに気づいて愕然としました。
あなたにも似たような不安、ありませんか?休職中や復職直後の年にふるさと納税をする予定があるなら、前年の上限額をそのまま使うのは避けてみてください。ふるさと納税サイトのシミュレーターに、その年の実際の収入見込み(休職期間の給与減や傷病手当金は含めない実収入)を入力し直すことをおすすめします。可能であれば、年末近くまで待って所得がある程度固まってから寄付するのも、ひとつの手だと思います。
5|復職後に「また休職」を繰り返さないためにできること

「せっかく戻れたのに、また休むことになったらどうしよう」——復職を控えていると、この不安がずっと頭から離れないですよね。正直、私も同じことを何度も考えました。この章では、再休職を招きやすい3つの落とし穴と、職場に伝えるべきこと・無理に伝えなくていいことの線引きをお伝えします。
5-1|再休職を招きやすい3つの落とし穴(焦り・自己判断・孤立)
ここで押さえておきたいのは、復職後の再休職は「焦り」「自己判断」「孤立」の3つが重なったときに起こりやすいという点です。
まず焦りです。復職初日から休職前と同じペースで働こうとしてしまうパターンで、本人も周囲も「元通り」を期待しがちなのが原因です。心のエネルギーは、生活リズムが整ったからといって100%まで戻っているとは限らないんですよね。
次に自己判断。体調の変化を自分だけで判断して、通院間隔を勝手に空けたり、服薬をなんとなく後回しにしたりすることです。
実は私自身、最初に休職につながった原因のひとつが、まさにこの自己判断でした。前の章でも触れた通り、長年安定していたことに慢心して、服薬を忘れがちになっていたのに「まあ大丈夫だろう」と流してしまっていたんです。今振り返ると、あれが最初のサインだったなと思います。
最後は孤立です。復職後は忙しさや「休んでいた分を取り戻さなきゃ」という気まずさから、上司や支援者との面談を後回しにしてしまいがちです。厚生労働省の手引きでも、職場復帰後は症状の再燃がないか、業務遂行能力に無理がないかを定期的に確認する「フォローアップ」の段階が欠かせないとされています(出典:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」)。この確認の機会を自分から手放してしまうのが、孤立の怖さなんです。
5-2|職場に伝えるべきこと/無理に伝えなくていいこと
職場に何をどこまで話せばいいのか、悩みますよね。業務や安全に関わる体調の変化は伝えたほうがいいですが、診断の詳細な経緯や家庭の事情まで無理に話す必要はありません。
理由はシンプルで、職場が本当に必要としているのは「今どんな配慮が必要か」という実務レベルの情報だからです。プライバシーに踏み込んだ背景まで共有する義務はないんですよね。
伝えたほうがいいことは、次のようなものです。
- 体調の波が出たときに、自分で気づけるサイン
- そのサインが出たときに、周囲にしてほしい配慮
- 通院や服薬状況に大きな変化があったとき
- 業務量や働き方について、今の希望
第2章でお伝えした、私が使った症状別の5段階リストも、まさにこの「伝えたほうがいいこと」を形にしたものでした。
一方で、無理に伝えなくていいのは、診断に至った詳しい経緯や、家庭内の事情など、業務に直接関係しない部分です。話したくなければ、「体調管理のため」という説明にとどめても問題ありません。あなたが安心して働き続けるために必要な情報だけを、必要な相手に渡せば十分だと思います。
6|【体験談】休職・復職を経験した人たちのリアルな声

「復職した後、みんなどうなったんだろう」——気になりますよね。実は復職のかたちは一通りではなく、元の部署に戻る人もいれば、異動する人、働き方そのものを変える人、復職せずに別の道を選ぶ人もいます。この章では、私自身の体験談も含めながら、代表的な4つのパターンをお伝えします。
6-1|元の職場・元の業務に戻ったケース
休職からの復職では、「元の職場に戻る」パターンが依然として最も多数派です。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が企業を対象に行った調査では、メンタルヘルス不調による休職者について「元の職場に復帰する者が多い」と回答した企業が74.1%にのぼりました(出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」)。個人単位の調査でも似た傾向があり、レバレジーズ株式会社が2025年7月に行った調査では、休職経験者329名のうち36.1%が「休職前と同じ部署に復帰」と回答し、単一の選択肢としては最多でした(出典:レバレジーズ株式会社「メンタル不調による休職者の実態調査」)。
このケースの利点は、慣れた業務や人間関係の中で復帰できる安心感があることです。一方で、不調の原因がその職場自体にあった場合は、同じ環境に戻ることが再発リスクにつながることもあります。前の章でお伝えした厚生労働省の手引きでも、原則は元の職場への復帰としつつ、健康上の配慮が必要な場合は例外もあるとされているんですよね。
私自身は、休職の原因が特定の環境というより、長年の慢心と業務量の積み重ねだったこともあり、このパターンとは少し違う道をたどりました。次の項目で詳しくお話しします。
6-2|異動・配置転換をともなって復職したケース(体験談)
健康上の配慮や業務上の必要性がある場合は、元の職場ではなく別の部署に配置転換される形での復職も、決して珍しいことではありません。
前の章でお伝えした通り、私自身がこのパターンでした。休職前にいた、業務量が多く精神的な負担も大きかった部署から、入社当初から6年間勤務して自信を取り戻すきっかけになった部署へ異動させてもらったんです。
正直、最初は「戻りやすい環境に逃げているのでは」という葛藤も少しありました。でも実際に異動してみると、以前築いた関係性や仕事の勘がそのまま活きて、復職初日からフルタイムで働けたのは、この環境だったからこそだと思っています。
会社側から見ても、こうした配置転換は人事権の濫用にはあたらず、健康面や業務上の合理的な理由があれば認められる対応です。ただし、給与や職能資格を一方的に下げるような形の異動は別問題になるので、あくまで業務内容や勤務地の調整にとどめるのが基本だと私は考えています。
6-3|精神障害者手帳を取得し、オープン就労で働き方を変えたケース
休職をきっかけに精神障害者保健福祉手帳を取得し、オープン就労(障害を開示したうえで、配慮を受けながら働くこと)に切り替えるという選択肢もあります。
これはまさに私自身がたどった道です。一般雇用で働いていた頃にうつ状態、その後双極性障害と診断され、休職期間中に精神障害者手帳を取得しました。そのうえで就労移行支援に通い、大手企業の特例子会社(障害者雇用を促進するために親会社が設立する子会社)に、障害者雇用枠で採用してもらったんです。
先ほどのレバレジーズ社の調査でも、メンタルヘルスを理由に休職した人のうち約3割が精神障害者手帳を取得しており、取得後は約10人に1人が障害者雇用枠を、約6人に1人がクローズ就労(障害を開示せずに一般枠で働くこと)を選んでいるという結果が出ています(出典:同上、レバレジーズ株式会社の調査)。手帳を取っても働き方は一つではないんですよね。
私の場合、オープン就労を選んだことで、体調の波を職場に共有しやすくなり、結果的に13年間働き続けられる土台になったと感じています。もちろん、開示せずに一般枠で働き続けるという選択も間違いではありません。どちらが合うかは、人によって違うと思います。
6-4|復職を選ばず、退職・転職を選んだケース
少し意外かもしれませんが、休職後に元の会社へ復職せず、退職や転職という道を選ぶ人も少なくありません。
先ほどのレバレジーズ社の調査では、休職明けに約5割が退職し、20代に限ると7割を超えるという結果が出ています(出典:同上)。復職や転職をした人でも約半数が再度メンタルヘルス不調で休職を経験しており、転職者に限っても4割以上が再休職しているというデータもあります。
正直な感想を言うと、この数字を見て少し胸が痛みました。私は幸い13年間、同じ会社で働き続けられていますが、それは職場や周囲の理解に恵まれた部分が大きいと思っています。誰もが同じ環境で続けられるとは限らないんですよね。
転職を選んだ人の中には、病歴や休職の事実を転職先に伝えなかった人が約4割いるという結果もあります。あなたが今、復職と退職のどちらを選ぶか迷っているなら、どちらが「正解」ということはありません。自分の状態と、置かれている環境を照らし合わせて判断してみてください。
復職ではなく転職という選択肢を考えている方は、障害者雇用に理解のある下記の様な専門サービスを使うことで、条件に合う求人や職場との相性を事前に確認しやすくなります。
①AI時代の今通うとしたら、No.1候補
②当時、私が通っていてWEBの基礎が学べてお薦め
7|休職・復職に関するよくある質問

ここまで読んでも、まだ細かい疑問が残っていませんか?この章では、休職・復職について特によく聞かれる5つの質問に、Q&A形式でお答えします。
Q. 復職したら部署は変わりますか?
必ず変わるわけではなく、実は元の部署に戻る人のほうが多数派です。前の章でお伝えした通り、企業調査でも個人調査でも「元の部署に戻る」がもっとも多いパターンとして出ています。
一方で、健康上の配慮や業務上の理由があれば、別部署への異動をともなう復職もあり得ます。私自身がまさにこのケースで、休職前より負担の軽い部署へ異動させてもらいました。詳しくは前の章でお話しした通りです。
つまり答えは「会社と本人の状況次第」であり、一律のルールはありません。復職面談の際に、自分の希望を伝えておくことが、結果的に納得のいく配属につながりやすいと思います。
Q. 休職は何ヶ月でクビになりますか?
法律で「何ヶ月」と一律に決まっているわけではありません。休職できる期間は会社の就業規則で定められていて、勤続年数に応じて数ヶ月から数年まで、会社によってかなり幅があります。
期間満了までに復職できない場合、就業規則の定めに沿って「自然退職(会社側の特別な意思表示がなくても、規定に基づいて自動的に退職扱いとなること)」または「解雇」という扱いになります。解雇の場合は、労働基準法にもとづき30日以上前の予告か、解雇予告手当(30日前の予告に代えて支払われる、30日分相当の平均賃金)の支払いが必要です。
ここで大事なのは、解雇には客観的な合理性と社会通念上の相当性が求められるという点です。主治医・産業医の判断を無視した一方的な打ち切りは、不当解雇として争える可能性があります。まずは前の章でお伝えした自分の会社の就業規則を確認し、期間がどれくらい残っているかを把握しておくことをおすすめします。
Q. 復職後、給料はどうなりますか?
正式に復職する前の「試し出勤」期間は原則無給で、正式復職後は勤務時間や業務量に応じた給与になります。
正式復職前の試し出勤は、実際に業務を行わない限り労働とはみなされず、賃金は発生しないのが一般的です。一方、復職後に段階的に勤務時間を戻していく「リハビリ勤務」では、実際に働いた時間に応じて給与が支払われます。これはノーワーク・ノーペイの原則(働いていない時間分の賃金は支払われないという、労働の基本原則)にもとづくものです。
たとえば休職前の所定労働時間が1日8時間だった場合、最初は4時間勤務からスタートし、6時間、8時間と段階的に戻していく方法が一般的です。当然、勤務時間が短い間は、給与もその分減ります。
ただし、業務内容だけ休職前より重くしながら給与だけ下げる、といった一方的な変更は認められにくいところです。会社には安全配慮義務があり、回復の程度に見合った業務量と賃金のバランスを保つことが求められています。
Q. 転職時、履歴書に休職期間を書く必要はありますか?
法律上の記載義務はありませんが、在籍期間中の出来事として職歴とのつじつまが合っている必要があります。
人事・採用の経験から言うと、休職期間そのものを履歴書に書く義務はありません。賞罰事項ではないですし、在籍していた事実に変わりはないからです。ただ、面接で在籍期間中の空白を聞かれた際に、事実と違う説明をしてしまうと、経歴詐称と受け取られかねません。
前の章でお伝えした調査でも、転職者の約4割が休職の事実を転職先に伝えていませんでした。伝えるか伝えないかは本人の判断に委ねられている部分が大きく、「絶対に開示すべき」というものではないと私は考えています。
聞かれたときにどう答えるかだけ、事前に自分の中で整理しておくと、いざというときに慌てずに済むと思います。
Q. 家族にはどう伝えればいいですか?
症状の詳細よりも、「今の状態」と「してほしいこと」を中心に伝えるのがおすすめです。
家族は毎日近くで見ているぶん、心配のあまり「早く元気になって」と急かしてしまうことがあります。これは決して悪気があるわけではなく、どう接すればいいか分からないだけ、というケースも多いんですよね。
私自身、休職中は「今日は調子がいい・悪い」を簡単に共有するだけでも、家族が過度に気を遣いすぎることを防げた実感があります。全部を細かく説明する必要はなく、「今はこういう状態で、こうしてもらえると助かる」くらいの伝え方で十分だと思います。
一人で抱え込まず、家族にも少しずつ頼ってみてください。
障害者雇用への転職、復職(リワーク)という選択肢を考えている方は、障害者雇用に理解のある専門サービスを使うことで、条件に合う求人や職場との相性を事前に確認しやすくなります。
以下の2つの専門サービスは、私が採用担当していた際にも付き合いがあり、興味を持っていたサービスと実際に選んだサービスですので、参考にしてみてください。
①AI時代の今通うとしたら、No.1候補
②当時、私が通っていてWEBの基礎が学べてお薦め
まとめ|休職は「立て直しの時間」。焦らず、使える制度は使い倒す

ここまで長い記事に付き合ってくださって、ありがとうございます。最後に、この記事の要点を振り返りながら、私からあなたに伝えたいことをお話しします。
最初にお伝えした通り、休職は決してキャリアの終わりではありません。多くの企業で、休職者の大半が復職しているというデータもありましたよね。休職から復職までの流れは、就業規則の確認に始まり、休養期・生活リズム期・準備期という段階を踏んで進んでいく、というのが基本の道筋でした。
人事・採用担当としての経験からは、焦らず、自分の状態を周囲と共有できる人ほど復職がスムーズだったという実感をお伝えしました。リワークと就労移行支援については、在職中か退職後かによって選び方が変わってくる、という点もお話しした通りです。
お金の面では、傷病手当金や社会保険料の基本、そして意外と見落としがちな「復職した年のふるさと納税」の注意点にも触れました。あれは私自身がやってしまった失敗ですが、同じことで損をする人が一人でも減ればと願っています。
復職後については、焦り・自己判断・孤立という3つの落とし穴を避けること、そして職場に伝えるべきこと・伝えなくていいことの線引きについてお話ししました。復職のかたちも一つではなく、元の職場に戻る人、異動する人、働き方そのものを変える人、退職・転職を選ぶ人、それぞれの道があるとお伝えした通りです。
正直に言うと、私自身、13年間のうち4ヶ月の休職を経験しましたが、そこから戻ってこられたのは自分一人の力だけではありません。就労移行支援の担当者、産業医、上長との1on1、支援員との面談——周囲の力を借りたからこそ、フルタイムで復職できたんです。もし一人だけで抱え込もうとしていたら、もっと時間がかかっていたと思います。
だからこそ、使える制度は遠慮せず使い倒してください。傷病手当金も、リワークも、就労移行支援も、あなたのために用意されているものなんですよね。一人で頑張りすぎなくて大丈夫です。
今、休職中で不安を抱えているあなたにも、休職者を迎える立場のあなたにも、この私の体験談の記事が少しでも道しるべになれば嬉しいです。焦らず、あなたのペースで、立て直していってください。

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