一般雇用で働いていた頃にうつと双極性障害を発症し、精神障害者保健福祉手帳を取得。就労移行支援を経て、大手企業の特例子会社へ。面接を受ける側と、面接をする側の両方に座りました。
はじめに

障害者雇用で入ったのに、入社のときに伝えた配慮をしてもらえない。上司が替わってから、仕事が増えてから、前より働きにくくなった。
そう感じて、このページを開いた方も多いのではないでしょうか。「でも、これ以上お願いしたら、わがままだと思われるかも」。
そう考えて、言い出せずにいる方もいると思います。
私は一般雇用の3社すべてで体調を崩し、うつ、双極性障害と診断されて精神障害者保健福祉手帳を取得しました。
就労移行支援を経て、大手企業の特例子会社に障害者雇用で入り、1社で13年働いています。
その間、採用担当として面接する側にも座りました。休職は2回で、2回目(40代後半)は休職とリワーク(休職中の人が職場に戻るための訓練)を経て復職しています。
配慮事項を聞く側と、配慮を受ける側。その両方にいた立場から、この記事を書きました。
この記事でわかること
- 会社に配慮の義務はあるのか、どこまで頼めるのか
- 「配慮されない」と感じる、よくある5つの原因
- 相談の4段階(上司 → 社内の窓口・産業医 → 支援機関 → 労働局)
- 辞めるか残るかの判断と、次の職場の選び方
こんな人に読んでほしい
- 障害者枠や特例子会社で働いていて、伝えた配慮が守られていないと感じる
- 自分のお願いがわがままではないか、不安になっている
- 会社ともめずに、できれば今の職場で働き続けたい
1. 障害者雇用で「配慮してもらえない」のは、あなたのわがまま? 先に結論

配慮をお願いすることは、わがままではありません。会社には、障害のある社員に合理的配慮(働くうえでの困りごとを減らすための調整)をする義務があります。
ただし、何をどこまでするかは、本人と会社の話し合いで決まるんです。
「こんなことを頼んだら、面倒な社員だと思われないか」。あなたも、そう思って言葉をのみこんだことはありませんか?
この章では、法律の決まり、どこまで頼めるかの目安、わがままと受け取られにくいお願いの形を、厚生労働省の資料に沿って整理します。
1-1. 結論:会社には合理的配慮の義務がある。ただし中身は「話し合い」で決まる
障害者雇用促進法(障害のある人の雇用を進めるための法律)が改正され、2016年(平成28年)4月1日から、会社には合理的配慮の提供が義務づけられています。
「お願いすれば、してもらえるかもしれない」ものではなく、法律で決まった会社の役目です。
対象の範囲も、思っているより広いかもしれません。
- 対象の会社:事業所の規模や業種に関係なく、すべての事業主
- 対象の人:障害者手帳を持っている人に限らない
- 障害の種類:身体・知的・精神(発達障害を含む)など。長いあいだ仕事に大きな制限を受けている人
(出典:厚生労働省「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」)
ただ、ここで1つ知っておいてほしいことがあります。
義務があるからといって、伝えた希望がそのまま通るとは限りません。
同じリーフレットでは、具体的にどんな配慮をするかは、障害者と事業主がよく話し合ったうえで決める、とされています。
厚生労働省の合理的配慮指針(会社が配慮をするときの国の手引き)にも、合理的配慮は本人と会社の「相互理解の中で提供されるべき」ものだと書かれています。
(出典:厚生労働省「合理的配慮指針」)
なお、2024年4月に民間の事業者の義務になったのは障害者差別解消法の合理的配慮で、お店などのサービスを使う人への対応の話です。
働く人への配慮は障害者雇用促進法が受け持ち、2016年から会社の義務になっています。
(出典:厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】」A4-1-2、e-Gov法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」第13条)
1-2. 合理的配慮とは? 精神障害・発達障害の人によくある配慮の例(通院・休憩・仕事の量・指示の出し方)
合理的配慮は「障害者だから特別扱いする」ものではなく、ほかの社員と同じように働き、力を出すうえでの支障を取りのぞくための措置、という位置づけです。
合理的配慮指針には、精神障害・発達障害の人が入社後に受けられる配慮の例が載っています。困りごとの場面ごとに分けると、次のとおりです。
| 困りごとの場面 | 指針にある配慮の例 |
|---|---|
| 通院・休憩 | 出勤・退勤の時刻、休暇、休憩について、通院や体調に配慮する/できるだけ静かな場所で休憩できるようにする |
| 仕事の量 | 本人の状況を見ながら、仕事の量などを調整する |
| 指示の出し方 | 仕事の優先順位や目標、予定をはっきりさせ、指示を1つずつ出す/手順が分かるマニュアル(図を使ったものなど)を作る |
| 相談のしかた | 仕事の指導や相談の担当者を決めておく |
| 音や光(発達障害) | 感覚過敏(音や光などを強く感じやすいこと)をやわらげるため、サングラスや耳栓の使用を認める |
私の勤め先でも、通院のための休暇がとれます。
ただし、指針の例は「多くの会社が対応できると考えられるもの」で、すべての会社が必ずするわけではありません。
配慮は一人ひとりの状態や職場によって変わる「多様で個別性が高い」ものなので、表にないことでも、合理的配慮に当たる場合がありますよ。
1-3. 会社が「過重な負担」として断ることもある|どこまで頼めるかの目安
会社にとって負担が重すぎる配慮は、「過重な負担」として断られることがあります。
法律は、会社に過重な負担(重すぎる負担)がかかる場合を、配慮の義務から外しているからです。
また、合理的配慮は仕事を進めるための措置なので、日常生活のための眼鏡や車いすなどは対象外です。
とはいえ、会社が思いつきで「無理です」と言えるわけではありません。
過重な負担かどうかは、事業活動への影響、実現の難しさ、費用・負担の程度、企業の規模、企業の財務状況、公的な支援があるかどうか、の6つを合わせて、配慮ごとに判断することになっています。

見落とされやすいのは、断ったあとの決まりです。
会社が過重な負担だと判断したときは、実施できないことを本人に伝え、本人から求められたら、その理由を説明することになっています。
そのうえで本人の意向を十分に尊重し、負担にならない範囲で、何らかの配慮をする必要があります。
方法がいくつか考えられるときは、本人の意向を十分に尊重したうえで、会社がより提供しやすい方法を選ぶこともできます。
「この形ではなく、あの形で」となるのは、制度の中でも想定されていることなんです。
(出典:厚生労働省「合理的配慮指針」第4の1・第5の1・第5の2、厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】」A4-1-3・A4-1-4)
1-4. 「わがまま」と「配慮のお願い」の違いは、理由と代わりの案があるか
同じお願いでも、「なぜ必要か」と「ほかの形でもよいか」が一緒に伝わると、わがままではなく配慮のお願いとして受け取られやすくなります。
合理的配慮は、仕事の支障を減らすためのものでした(1-2)。だから会社が知りたいのは、「何をしてほしいか」以上に「仕事のどこで、何に困っているか」です。
知恵袋には、障害者雇用で掃除や洗濯の仕事をしている人の相談がありました。指導役の人とずっと二人で作業していて、話しかけられ続けて疲れてしまう。
一人で作業したいと伝えるのはわがままか、という質問です。

話しかけられ続けると疲れる、くらいのことでも言っていいんでしょうか?

仕事に支障が出ているなら、伝えていいことだと私は思います。「疲れて作業に集中しにくい」という支障と、「作業中は一人で進める時間がほしい」「相談はまとめてしたい」のような案をセットにすると、相手も動きやすくなりますよ。
同じような困りごとでも、伝え方で受け取られ方は変わります。違いを表にすると、次のようになります。
| わがままに聞こえやすい形 | 配慮のお願いとして伝わりやすい形 | |
|---|---|---|
| 理由 | 「つらいので」「苦手なので」だけ | 仕事のどの場面で、どう困るか |
| ほかの案 | 1つの案しか受け入れない | 「難しければ、この形でも」と2つめも出す |
案がうまく思いつかなくても、心配はいりません。
指針には、どんな配慮を希望するか具体的に言いにくいときは、支障になっている事情をはっきりさせれば足りる、とあります。
その場合は、会社のほうが実施できる方法を示して話し合うことになっているんです。
お願いし直すときの具体的な言い方は、5章でまとめます。入社前の面接で配慮事項をどう伝えるかは、特例子会社の面接で聞かれる質問と回答例で書きました。
次の章では、義務があるのに「配慮されない」と感じることがなぜ起きるのかを、5つの原因に分けて見ていきます。
2. 配慮してもらえないと感じる場面と、よくある5つの原因

「配慮されていない」と感じるとき、原因は1つとは限りません。伝え方なのか、伝わる範囲なのか、時間がたって状況が変わったのか。
原因によって、お願いし直す相手も中身も変わってきます。
あなたの職場で起きていることは、この章の5つの原因のどれに近いでしょうか?読みながら、自分の状況に当てはめてみてください。
2-1. こんなとき「配慮されていない」と感じやすい
「配慮されていない」と感じやすいのは、入社前に伝えた話や聞いていた話と、毎日の仕事とのずれが見えたときです。
知恵袋にも、そうした相談がいくつも寄せられています。場面ごとに要約して並べてみました。
| 投稿 | どんな場面か |
|---|---|
| 知恵袋(2026年5月) | パニック障害の人。就労移行支援のスタッフが「電話は慣れてから」と会社に頼んでいたのに、初日から電話を取ることになった |
| 知恵袋(2026年9月) | 障害者雇用で入ったが、仕事が多すぎる。社内に相談の窓口はあるのに、何をどう相談すればいいか分からない |
| 知恵袋(2026年7月) | 障害者雇用の正社員。会社が在宅勤務を認めていないが、体調が悪い日だけ在宅にしてほしい |
3つとも、本人からすると「伝えたはず」「頼めるはず」と思っていたことと、目の前の仕事がかみ合っていません。ただ、かみ合わない理由はそれぞれ違うんですよね。
1件目は、頼んだ配慮が現場まで届いていないのかもしれません。
2件目は、配慮の問題なのか、部署全体の仕事の量の問題なのかを分けて考える必要がありそうです(3章で分けます)。
3件目は会社のルールとの兼ね合いの話なので、原因⑤(2-6)で取り上げます。
配慮は、入社のときに決まり、現場に伝わり、時間とともに続いていくものです。
この流れのどこかで止まると、「配慮されない」と感じることになります。5つの原因を流れの上に置くと、次のようになります。

2-2. 原因①伝えた配慮が、あいまいなまま伝わっている
入社のときに伝えた配慮が「無理をさせないでください」のような言葉だけだと、受け取る人によって中身が変わってしまいます。
言葉があいまいだと、上司は上司なりに「配慮しているつもり」になれるからです。本人は「配慮されていない」と感じ、上司は「配慮している」と思っている。
どちらもうそをついていないのに、話がかみ合わなくなるんです。
| 伝えた言葉 | 受け取る人によって変わる中身 |
|---|---|
| 無理をさせないでほしい | 残業をなくす? 仕事の量を減らす? 締め切りをゆるめる? |
| 通院に配慮してほしい | 月に何回? 平日の何時ごろ? 休みにするか、遅れて出勤か? |
| 指示は分かりやすくしてほしい | 口頭でゆっくり? 文字で残す? 1つずつ? |
| 体調が悪いときは相談したい | 誰に? どのくらい悪いときに? どうやって? |
言葉が大まかなままだと、話し合いで決まったことも大まかなまま残ります。
すると、上司が替わったときに中身が抜け落ちやすくなり、このあとの原因③にもつながっていきます。
入社前に配慮事項を1枚にまとめる道具として、ナビゲーションブック(自分の特性や、配慮してほしいことをまとめた自己紹介の書類)があります。
書き方はナビゲーションブックの書き方と記入例でくわしく紹介しました。
入社してからでも、言葉を具体的にし直すことはできます。その手順は5章で取り上げますね。
2-3. 原因②直属の上司や同僚にまで伝わっていない
人事や採用の担当には伝わっていても、毎日一緒に働く上司や同僚にまでは届いていない、ということがあります。
精神障害は見た目で分かりにくい一方で、個人情報の関係から、チームリーダー以外は配慮事項を知らないこともあります。
先ほどのリーフレットでも、上司や同僚に障害の特性や配慮を説明するときは、説明する内容や相手の範囲を、本人と十分に打ち合わせておくよう求めています。
プライバシーを守るため、あえて範囲をしぼっていることもあるわけです。
私が採用担当だったころも、配属後の様子は、採用する側からは見えにくいものでした。
配属されると現場のリーダーに任されるので、採用した側が実際の状況をつかむのは難しかったんです(くわしくは4章で書きます)。
配慮事項が配属先にどう伝わっていくかは、特例子会社の「闇」を確かめた記事の「面接で伝えた配慮事項は、配属先にどう伝わるか」で、採用担当の立場からまとめています。
2-4. 原因③上司の交代・異動・仕事の増加で、配慮が引き継がれていない
配慮は、そのときの上司との間で決まったものになりやすく、上司が替わったり、自分が異動したり、仕事が増えたりすると薄れやすくなります。
人が替われば、前の上司が覚えていた「この人にはこうしている」は、そのままでは残りません。
仕事が急に増えた時期には、決めていた配慮より目の前の仕事が先に立つこともあるでしょう。
合理的配慮指針では、会社は必要に応じて定期的に、職場で支障がないかを確かめることとされています。
先ほどのQ&Aでは、そのきっかけの例として、年に1回の契約更新や健康診断のほか、障害の状態が悪くなったときや、本人や上司の異動など職場の状況が変わったときが挙げられているんです。
私は部署が何回か替わっていて、そのたびに、通院や仕事の量などの配慮を自分から新しい上司に伝え直してきました。
指針にも、会社からの確認を待たずに、本人から支障を申し出てよいと書かれています。
2-5. 原因④体調や障害の状態が変わり、入社のときの配慮では足りなくなった
入社のときに決めた配慮は、入社のときの体調に合わせたものです。体調や障害の状態が変われば、合う配慮も変わってきます。
2-4のQ&Aのとおり、障害の状態が悪くなったときも見直しのきっかけです。
たとえば、次のような変化があると、入社のときの配慮では合わなくなることがあります。
- 通院の回数や時間帯が変わった
- 薬が変わり、朝の調子や眠気が変わった
- 季節や生活の変化で、体調の波が大きくなった
- 体調が戻り、仕事の量が少しずつ増えてきた
最後の変化は、見落とされやすいものです。私の2回目の休職も、体調が戻り、一般雇用のころに近い量の仕事をこなすようになっていたあとのことでした。
くわしくは4章で書きます。
入社から何年かたっているなら、入社のときの配慮と今の自分を、一度見比べてみてください。配慮が足りなくなったのは、会社が手を抜いたからとは限りません。
今の状態に合わせて、配慮を作り直す時期が来ているのかもしれません。
2-6. 原因⑤会社が「対応しきれない」と判断している
会社が、お願いされた配慮を過重な負担だと考えている。または、どう対応すればいいか分からずに止まっている。
そんな場合もあります。
1-3で見た6つの要素から判断されるので、同じお願いでも、ある会社では対応でき、別の会社では難しい、ということが起こりえます。
2-1の在宅勤務の相談は、この形に近いかもしれません。投稿によると、在宅勤務ができない部署との不公平などを理由に、会社が在宅勤務を禁止しているそうです。
会社全体のルールと、一人の配慮のお願いがぶつかっている状態ですね。
もう1つ考えられるのは、会社に「どう配慮すればいいか」の知識や経験が足りないケースです。
Q&Aでは、会社がどんな配慮がよいかを支援機関の職員に相談したい場合も、支援機関の人に入ってもらう例に挙げています。その方法は5章(5-5)と6章で紹介します。
(出典:厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】」A4-2-7)
ここまでの5つの原因を、変えられる余地で分けると次のようになります。
- 原因①〜④:伝え直したり見直したりすることで、変えられる余地がある
- 原因⑤:理由を聞いて、別の方法を探す道が残っている
ただ、「配慮されない」と感じていることの中には、そもそも配慮の問題ではないものが混ざっていることもあります。
次の章では、配慮・仕事の量・人間関係の3つに分けて考えてみましょう。
3. その「配慮されない」は本当に配慮の問題? 3つに分けて考える

「配慮されない」というつらさの中には、配慮の問題だけでなく、部署全体の仕事の量の問題や、人間関係・ハラスメントの問題が混ざっていることがあります。
どれに当たるかで、最初の相談先が違います。
2章の5つの原因を読んで、「どれもしっくりこない」と感じた方もいるのではないでしょうか?
3-1. 「配慮」「仕事の量」「人間関係・ハラスメント」は、相談先も解決のしかたも違う
知恵袋(2026年7月)には、上司が気分によって無視したり、目を合わせなかったりする、障害者雇用だから我慢するしかないのか、という相談がありました。
ベストアンサーは、まず「ほかの人にも同じ態度か」を確かめるよう勧めていました。ほかの人にも同じなら、配慮の義務とは少し違う話になる、という答えです。
同じ回答者は、ハラスメントやいじめなら、障害の有無に関係なく改善されるべきだ、とも書いています。
この答えを手がかりに、3つの違いを整理すると次のようになります。
- 配慮の問題:障害による仕事の支障を減らすために決めたこと、伝えたことが守られていない。2章の5つの原因はここに入る
- 仕事の量の問題:自分だけでなく、部署全体が忙しい。仕事の割り振りの問題
- 人間関係・ハラスメントの問題:特定の人の言い方や態度がつらい。障害があってもなくても、改善されるべき問題
仕事の量には、障害者雇用の職場ならではの事情もあります。
配慮が必要な人や、体調が安定せず休みがちな人もいるので、体調が安定していて経験のある人に、仕事の依頼が集まりやすくなります。
中にいる私も、ここは避けにくい所だと感じてきました(できる人に仕事が集まる仕組みでくわしく書いています)。
ただし、部署全体の忙しさで、障害による支障が出ているなら話は別。1-2の表にあった「仕事の量などを調整する」配慮の話にもなります。
人間関係のうち、職場のパワーハラスメント(パワハラ)は、労働施策総合推進法(パワハラ防止などを定めた法律)で扱われます。決まっていることは、主に次の3つです。
- 会社には、パワハラを防ぐための措置が義務づけられている。相談窓口をあらかじめ決めて、社員に知らせることもその1つ
- 相談したことを理由に、解雇などの不利益な扱いをすることは禁止されている
- パワハラの代表的な6つの型には、「人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)」も入っている
(出典:厚生労働省・都道府県労働局「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」(令和8年7月作成))
3-2. 見分けるためのチェック表
迷ったときは、「ほかの人なら、同じように困るだろうか」と考えてみてください。3つを分けやすくなりますよ。
確かめる項目と最初の相談先を、1枚にまとめました。

2-1の「仕事が多すぎる」という相談のように、2つの列に当てはまることもあります。
そのときは、どこまでが部署全体の話で、どこからが自分の支障かを分けておくと、相談された側が動きやすくなります。書き出し方は5-1で紹介しますね。

上司の言い方がきついんですけど、私がミスをしたせいかもしれなくて…。それでも相談していいんでしょうか?

仕事のうえで必要で、やり方も相当な範囲の注意や指導は、パワハラには当たりません。ただ、先ほどのパンフレットでは、ハラスメントに当たるか微妙な場合でも、会社の相談窓口は広く相談に応じることとされています。白黒をつけてから相談する必要はないんですよ。
会社に相談しても対応してもらえないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。外の窓口の使い方は6章でまとめます。
(出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」)
3-3. 同僚が仕事をカバーしてくれて気まずいとき
同僚が仕事を代わりに引き受けてくれて気まずい、という悩みは、人間関係に見えて、出発点は仕事の割り振りにあります。
知恵袋(2026年1月)には、障害者雇用で働く人のできない仕事を同僚がカバーしていて、その同僚が不満をもち、冷たい態度をとっているという相談がありました。
合理的配慮の違反を問われるのは、同僚個人なのか会社なのか、という質問です。
回答は、義務を負うのは会社で、同僚個人ではない、というもの。1-1で見た指針の考え方とも合っています。
仕事が特定の人に偏らないよう会社が調整すること、本人からも負担をかけていると伝えると関係がやわらぐ場合があることも挙げていました。

カバーしてもらっている私が、上司に「割り振りを見直してほしい」と言うのは、図々しくないですか?

図々しくはないと思いますよ。偏りを直せるのは、仕事を割り振る上司です。同僚の負担が軽くなれば、気まずさも一緒に軽くなるかもしれません。
それでも冷たい態度が続いたり、無視や仲間外しのような形になったりしたら、3-1の人間関係の問題として、社内の相談窓口に相談する段階です。
ここまでは、悩みを分けて考えるための整理でした。次の章では、私自身が当事者として、配慮をお願いし直すのが遅れた経験と、復職のときにお願いし直したことを書きます。
4. 採用する側からは見えにくい|私が「きつい」と言えるまでと、復職でお願いし直したこと

配属されたあとの配慮の様子は、採用する側からは見えにくいものです。
だから本人が声に出すしかないのですが、私自身、その声を出すのが遅れ、2回目の休職を経験しています。
「まだ大丈夫」と、自分に言い聞かせながら働いていませんか?
この章では、採用する側から見えていたこと、当事者として言えなかったこと、復職のときにお願いし直したことを、順に書きます。
4-1. 採用する側からは、配属後の配慮は見えにくい
2-3で触れたとおり、配属後は現場のリーダーに任されるため、採用する側からは様子をつかみにくい立場でした。
それでも私は、ときどき気にかけて「状況はどう?」と声をかけ、話をするようにしていました。その範囲では、「配慮されていない」という声は聞きませんでした。
ただ、「聞かなかった」と「なかった」は同じではありません。当事者の私自身も、このあと書くように、「きつい」を言えずにいた時期があります。

人事や採用の人が気にかけてくれているなら、言わなくても気づいてもらえそうですけど…。

声をかけるのは、ときどきなんですよね。聞かれたときに言えるかどうかで、届くかどうかが変わってきます。
見えにくいからこそ、本人が声に出したことが、いちばん確かに届きます。
4-2. 繁忙期に、仕事の量が急に増えた
2回目の休職の前、繁忙期で仕事の量が急に増えました。
そのころに重なっていたことを、書き出します。40代後半、特例子会社に入って13年目のころのことです。
- 10年以上の勤務で体調が戻り、いろいろな部署で働いた経験が自信になって、一般雇用のころに近い量の仕事をこなすようになっていた
- 薬を飲み忘れることが多くなっていた。長年安定していたという慢心が、あったのかもしれない
- 繁忙期に、部署からの人員追加の要望や、アルバイトなどの臨時の募集が急に増え、一人あたりの負担が大幅に増えた
- そこに家庭の事情と仕事の忙しさが重なって、うつの側に振れ、そのまま戻せなくなった
今思い返すと、一般雇用のころに近い量をこなしていたころは、双極性障害特有の躁状態だったのかもしれません。これは、あくまで今の私の振り返りです。
2-5で書いた「入社のときの配慮では合わなくなる」変化が、私の場合はこうして重なっていました。
4-3. 「きつい」と言えたのは、限界に近くなってから
「きつい」と伝えるのが、遅かった。限界に近くなってから、ようやく伝えられたんです。
無理が続いて、少し体調に異変が出ても言い出せませんでした。周りを気にしすぎていたからです。
当時、頭にあったのは次のようなことでした。
- チーム全体が忙しい時期だから
- 自分が言えば、周りに迷惑がかかるから
- マネージャーも忙しそうで、弱音を吐けないから
でも、休職になれば、結局は周りにもっと大きな負担がかかります。
2-4で書いたとおり、決まった配慮は部署が替わるたびに伝え直せていました。それでも、忙しさの中での「今きつい」は、言うのが遅れました。
このとき選んだのは、退職ではなく休職とリワークでした。
4-4. 復職のときに、配慮をお願いし直した(症状別対処法と「少しずつ試して、早ければ戻す」)
復職のときは、今の自分に合わせて、配慮をお願いし直しました。会社に伝えたのは、大きく2つです。
- 症状別対処法:支援機関の担当者のアドバイスを受けて作った1枚。双極性障害の私の特性を、躁・軽躁・平常時・軽うつ・うつの5段階に分け、それぞれでよく出る行動や考え方のパターンと、その対処法をまとめたもの
- 仕事の量の決め方:「休職前とくらべて体力も体調の安定度も落ちているので、自分でもどのくらいできるか分からない。少しずつ試して、ペースが早ければ戻す、をくり返しながら、だんだん仕事の量を調節していきたい」
症状別対処法は、上司と社内の相談員に渡しておきました。すると、周りが「あ、今ちょっと軽躁っぽいかも」と気づいてくれるようになりました。
自分では気づけない変化を、周りが先に見つけてくれる形です。
あわせて、週1回の上司との1対1の面談と、社内の相談員との面談で、細かな変化もその都度報告するようにしていました。
会社の側から見ても、こうして状態を見える形にしてくれる人は、安心できる材料がとても多いんですよ。
部署も、休職前の業務量が多く精神的な負担も大きい部署から、入社当初から6年働いて自信を取り戻すきっかけになった部署へ、異動させてもらえました。
勤務地も、自宅に少し近い拠点に変わっています。これも、特例子会社だからこその配慮だと思います。
次の5章では、限界の手前で配慮をお願いし直すための手順をまとめます。
●休職からリワークを経て復職するまでの流れは、体験談の記事にくわしく書きました。↓
5. 社内で配慮をお願いし直す手順

社内でお願いし直すときは、「書き出す → 相談する相手を決める → 伝える → 記録に残す」の順に進めると、話が行き違いにくくなります。
相談の4段階のうち、この章で扱うのは社内の1段目(直属の上司)と2段目(人事・社内の窓口・産業医)です。
4-3で書いたとおり、私は限界に近くなるまで言えませんでした。あなたがその手前で動けるように、手順を一つずつ見ていきましょう。
5-1. まず困りごとを書き出す|「何に困って、仕事にどう影響し、自分で何を工夫しているか」
相談の前に、困りごとを3つの点で書き出しておきます。2-2で見たとおり、言葉があいまいなままだと、受け取る人によって中身が変わってしまうからです。
| 書き出すこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 何に困っているか | 当日の朝に予定が変わると、頭の切り替えに時間がかかる |
| 仕事にどう影響しているか | 午前中の作業が遅れ、締め切りに間に合わない日が月に2〜3回ある |
| 自分で何を工夫しているか | 朝いちばんに予定表を見直し、変わった点をメモに書き出している |
「部署が替わってから」「薬が変わってから」のように、いつからそうなったかも一言添えておくと、2-4・2-5で見た見直しのきっかけが相手に伝わりますよ。
採用担当だったころ、私が見ていたのも病名ではなく、配慮事項がはっきりしているか、困ったときに相談できるか、でした(あくまで私個人の感覚です)。
4-4で紹介した私の1枚も、書き出したものをまとめた形の1つです。
5-2. 誰に相談するか|1段目は直属の上司、2段目は人事・社内の窓口・産業医
最初に相談するのは、直属の上司です。毎日の仕事を割り振り、配慮をその場で形にできるのは上司だからです。
上司に伝えても変わらないときや、上司には言いにくいときは、2段目の人事や社内の相談窓口に進みます。
会社には、障害のある社員からの相談に応じる体制を整える義務があり、主に次のことが求められています。
- 相談窓口をあらかじめ決めて、社員に知らせる
- 入社後の配慮の相談があったら、職場で支障になっている事情を速やかに確かめ、配慮を決める手続きを進める
- 相談した人のプライバシーを守る
相談したことを理由にした不利益な扱いについては、8章のQ4で取り上げます。
(出典:厚生労働省「合理的配慮指針」第6、厚生労働省「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」5ページ)
窓口は配慮の相談専用に新しく作る必要はなく、今ある相談窓口や、決めた担当者・部署で受けてもよいとされています。
名前が違っても、人事やふだんの相談窓口が受け付けていることがあります。相談先が就業規則や社内の案内に載っていないか、一度探しておくと安心です。
(出典:厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】」A4-5-2)
会社によっては、社内に専門の相談員がいます。
4-4で書いた社内の相談員も、精神保健福祉士・社会福祉士・ジョブコーチ(職場に慣れるまでを支える専門の支援者。6-2で紹介)などの専門知識を持つ社員でした。
体調に影響が出ているなら、産業医(職場で働く人の健康管理を担う医師)にも相談できます。常時50人以上が働く事業場には、産業医を選ぶ義務があります。
50人に満たない職場では、産業医がいないこともあります。

上司を飛ばして人事に相談したら、上司との関係が気まずくなりませんか?

心配なら、「上司にも相談したうえで、人事にも入ってほしい」という形にしてみてください。上司を責めるためではなく、決めた配慮を続けるための相談だと伝われば、角が立ちにくいですよ。上司に言いにくい事情があるときは、そのまま人事や窓口に相談して大丈夫です。
5-3. お願いし直すときの言い方の例(精神障害・発達障害の場合)
言い方は、次の5つの順に組み立てると伝わりやすくなります。
- 理由(障害の特性など)
- 今起きている困りごと
- 自分でしている工夫
- お願いしたいこと(難しければ別の形も)
- 見直しの時期
1-4の「理由と代わりの案」に、困りごと・自分の工夫・見直しの時期を足した形です。「まず1か月」のように区切ると、会社も試しやすくなります。
- 急な予定の変更(5-1の例):「特性で、急に予定が変わると切り替えに時間がかかります。最近、朝に予定が変わった日は午前の作業が遅れがちです。朝に予定表を見直すようにしていますが、変更が分かった時点でメッセージを一言いただけると助かります。難しければ、朝礼でまとめて伝えていただく形でもかまいません。1か月試して、また相談させてください」
- 会議で急に意見を求められる:「考えをまとめるのに時間がかかるため、会議で急に聞かれると、うまく答えられないことがあります。議題が分かれば、前日に準備しています。議題を前日までに共有していただけませんか。難しければ、その場で少し考える時間をいただけると助かります。次の面談で、続けるかどうか相談させてください」
4-4の私の伝え方(少しずつ試して、早ければ戻す)も、見直しを前提にした形でした。お願いが難しいと言われたときのことは、1-3で見たとおりです。
5-4. 話し合った内容を記録に残す
話し合ったら、その日のうちに記録を残しておきます。2-4で見たように、上司が替わると、決めたことが抜け落ちやすいからです。
残すのは、次の4つで足ります。
- 日付:〇月〇日の面談
- 誰と:直属の上司(人事の担当者も同席)
- 何を決めたか:予定の変更は、分かった時点でメッセージで知らせてもらう
- 次の見直し:1か月後の面談で、続けるかどうかを話す
決まったことは、メールで相手にも送っておくと、お互いの覚え違いを防げます。
たとえば「本日はありがとうございました。確認のため、決まったことをお送りします。認識が違っていたら教えてください」と書き、上の4つを添える形です。
この記録は、新しい上司に伝え直すときや、6章の窓口で経緯を説明するときの材料にもなるんですよね。
5-5. 主治医の意見や、支援機関の人の力を借りる
自分だけでは伝えきれないときは、主治医の意見や、支援機関の人の力を借りる手もあります。
主治医には、職場で困っていることを伝えて、どんな配慮があると働きやすいか、意見を聞いておきましょう。書面にしてもらえるかどうかも、主治医に相談できます。
医師の見立てがあると、会社にとっても配慮の中身を考える手がかりになります。
合理的配慮指針やQ&A(2-6)では、本人が意向をうまく伝えにくいときや、会社が配慮のしかたを相談したいときに、支援機関の人に話し合いへ入ってもらってよいとされています。
(出典:厚生労働省「合理的配慮指針」第3の3、厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】」A4-2-7)
どの支援機関に頼めるかは、次の6章で紹介します。
6. 社内で解決しないときの外部の相談先|3段目は支援機関、4段目は労働局

社内で話し合っても変わらないときは、外の支援機関(3段目)に相談できます。
それでも解決しないときは、都道府県労働局(4段目)が紛争の解決を手伝う仕組みがあります。
正直に書くと、私自身は、職場のことで社外の窓口に相談したことはありません。ただ、同じ職場のほかの社員には、相談している人もいます。
なので、この章は厚生労働省などの資料で確かめたことだけで書いています。
「社外に相談するなんて、大ごとになりそう」と感じていませんか?まずは、どの窓口が何をしてくれるのかを、ざっと見てみてください。
| 段階 | 窓口 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 3段目 | 就労定着支援・障害者就業・生活支援センター | 就職したあとの仕事と生活の相談 |
| 3段目 | 地域障害者職業センター | ジョブコーチが職場に来て支援 |
| 3段目 | ハローワークの専門の窓口 | 職場定着の支援と、会社への相談援助 |
| 4段目 | 都道府県労働局 職業安定部 | 助言・指導・勧告と、調停 |
6-1. 就職したあとも使える支援:就労定着支援と、障害者就業・生活支援センター
就労移行支援などを使って就職した人は、就労定着支援(就職後の職場への定着を支える障害福祉サービス)を使える場合があります。
もう1つの身近な窓口が、地域の障害者就業・生活支援センターです。
就労定着支援のあらましは、次のとおりです。
- 使える人:就労移行支援などを利用したあと、一般の会社に新たに雇われ、働き始めて6か月を過ぎた人。休職して就労移行支援などを使い、復職した人も含む
- 期間:3年間
- 中身:会社・障害福祉サービスの事業者・医療機関などとの連絡調整や、働くことに伴う生活の悩みの相談・助言
(出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」、e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則」第6条の10の3)
就労移行支援そのものにも、就職後の定着のための相談が含まれています。使える条件や手続きは、通っていた事業所やお住まいの市区町村にご確認ください。
これから事業所を選ぶ人に向けて、就職後に会社との面談へ来てもらえるかの聞き方を、就労移行支援の見学で聞く質問で紹介しています。
障害者就業・生活支援センターは、身近な地域で、仕事の面と生活の面を一体で支える窓口です。令和8年4月1日時点で、全国に340か所あります。
(出典:厚生労働省「障害者就業・生活支援センターについて」)
広島労働局の案内では、職場定着に向けた支援や、会社への雇用管理の助言も行い、相談・支援料は無料とされています。
仕事の悩みと、生活リズムや体調の悩みが絡み合っているときに相談しやすい窓口です。
(出典:広島労働局「障害者就業・生活支援センターについて」)
6-2. 地域障害者職業センター(ジョブコーチ支援)
会社が「どう配慮すればいいか分からない」状態なら、地域障害者職業センターのジョブコーチ支援が向いています。2-6で見た原因⑤の、知識や経験が足りないケースです。
地域障害者職業センターは、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営する施設です。
障害のある人への専門的な職業リハビリテーション(働くための評価や訓練、職場に慣れるための支援)のほか、会社への雇用管理の相談・援助も行っています。
(出典:高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」)
ジョブコーチ(職場適応援助者)支援のポイントは、次のとおりです。
- 支援計画に沿って、ジョブコーチが職場に出向き、直接支援する
- 本人だけでなく、会社の上司や同僚にも助言する
- 期間は一人ひとり決め、標準は2〜4か月
- 最後は、職場の上司や同僚が支援を引き継ぐことを目指す
- 就職を目指す人だけでなく、働いている人も対象。申し込みは地域障害者職業センターへ
(出典:高齢・障害・求職者雇用支援機構「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」)

ジョブコーチに来てもらうなんて、会社の人に嫌がられませんか?

会社にとっても、配慮のやり方を教わる機会になります。職場に来てもらう支援なので、まずは会社と相談しながら進める形になると思います。
6-3. ハローワークの専門援助の窓口
ハローワークの障害のある人のための専門の窓口(専門援助の窓口)は、仕事探しだけでなく、就職したあとの定着の相談にも応じています。
ハローワークには「精神・発達障害者雇用サポーター」が置かれていて、精神障害や発達障害のある人の就職支援や職場定着支援を行っています。
会社に向けた、雇用の課題を解決するための相談援助もしています。
(出典:厚生労働省「発達障害者の就労支援」、厚生労働省「難病患者の就労支援」)
就職の準備から職場定着まで、支援機関と組んで支える「チーム支援」もあります。転職を考え始めたら、求人の相談も同じ窓口でできますよ(判断のしかたは7章)。
6-4. 都道府県労働局|助言・指導・勧告と調停。相談する前に知っておきたいこと
会社との話し合いで解決しないときの最後の段が、都道府県労働局です。
合理的配慮の相談先は、労働局の「職業安定部」です。ハラスメントの窓口(雇用環境・均等部(室))とは違うので、取り違えないでください(ハラスメントは3-2)。
労働局の仕組みは、2つあります。
| 仕組み | 向いている場合 | 中身 |
|---|---|---|
| 労働局長による助言・指導・勧告 | 簡単な手続きで、早く解決してほしい | 労働局長が、会社と本人に必要な助言・指導・勧告をする |
| 障害者雇用調停会議による調停 | 公平で中立な第三者に入ってほしい | 専門の調停委員が改善案(調停案)を示し、受け入れるよう勧める |
調停案は受け入れるよう勧められるもので、受け入れること自体は義務ではありません。
(出典:厚生労働省「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」5ページ、厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】」A6-1・A6-2)
相談する前に知っておきたいのは、労働局が入っても、会社の対応がすぐに変わるとは限らないことです。
知恵袋(2025年6月)には、投稿者が就労移行支援で知り合った知人の話として書いた投稿がありました。会社が配慮をしないと労働局に相談し、会社に指導が入った。
それでも会社から「できることは何もない」と言われ、体調を崩して退職した、という内容です。
相談しないほうがいい、という話ではありません。労働局に相談するときも、体調を守ることを先に置き、主治医や支援機関の人と一緒に進めてみてください。
5-4の記録があれば、経緯を説明する材料になります。労働局の助言や指導にどこまで力があるかは、8章のQ1で取り上げます。
4段階を使っても変わらないこともあります。次の7章では、残るか職場を変えるかの判断と、次の職場の選び方を書きます。
7. それでも変わらないとき|辞めるか残るかの判断と、次の職場の選び方

4段階を使っても変わらないときは、「話し合いの余地があるか」と「体調が保てているか」の2つで、残るか移るかを考えると決めやすくなります。
どちらが正しい、ということはありません。
「ここで辞めたら負けだ」と、自分を追い込んでいませんか?この章では、判断の目安と、辞める前にしておきたいこと、次の職場の選び方を順に見ていきます。
7-1. 残って話し合いを続けたほうがよい場合
会社が話し合いに応じていて、体調もまだ保てているなら、残って話し合いを続ける道があります。次のような状態が、ひとつの目安です。
- 会社が話し合いには応じていて、少しずつでも変わっている
- 部署や仕事を変えるなど、別の形を会社が一緒に考えてくれている
- 体調は保てていて、主治医からも働き続けることを止められていない
4-3で書いたとおり、私は2回目の休職のとき、退職ではなく休職とリワークを選びました。正社員という立場だったことも、大きな安心につながっていました。
4-4のように、同じ会社の中で部署や仕事を変えて続けられる場合もあります。
辞めるかどうかを決める前に、社内で別の形がとれないかを話し合いの中で聞いてみる価値はありますよ。
7-2. 職場を変えたほうがよい場合|体調が崩れ始めたサイン
話し合いが止まっているときや、体調が崩れ始めているときは、職場を変えることも考えてよい段階です。
- 会社が話し合いに応じない、または「できることはない」で止まっている
- 6章の窓口を使っても、変わる見込みが見えない
- 配慮がないことで、体調に影響が出始めている
体調のサインとしては、一般的に次のようなものがあります。
- 眠れない、または朝起きられない日が増えた
- 遅刻や欠勤が増えた
- 休みの日も、仕事のことが頭から離れない
どのくらい深刻かは、自分では判断しにくいものです。医学的な判断は主治医の役目なので、サインに気づいた時点で相談してください。
7-3. 辞める前にしておきたい3つのこと(記録・主治医への相談・次の職場探しを先に)
辞めると決めたら、その前に3つのことをしておくと、次の一歩が楽になります。
- 話し合いの記録をまとめる:5-4の記録です。次の職場で配慮を伝えるときの材料にもなります
- 主治医に相談する:辞める時期や、今は休むことが先かどうかを一緒に考えてもらう
- 次の職場探しを先に始める:辞めてから探すより、気持ちに余裕を持って比べられる。ただし体調が崩れているときは、主治医と相談しながら、休むことを優先する
次の面接で退職理由をどう伝えるかは、障害者雇用で転職回数が多いと不利?で例文と一緒に紹介しています。
7-4. 次は配慮のある職場を選ぶ|応募前に確かめること
次の職場では、「配慮があるか」だけでなく、「入社後も配慮が続く仕組みがあるか」を確かめておくと安心です。
2章の5つの原因を裏返すと、聞いておきたいことが見えてきます。
- 配慮事項は、配属先の上司や同僚にどう伝わるか(2-3)
- 上司が替わったとき、配慮をどう引き継いでいるか(2-4)
- 入社後に、配慮を見直す面談などの機会はあるか(2-5)
- 忙しい時期はいつか、仕事の量を相談できるか(4-2)
- 困ったときの社内の相談先はどこか(5-2)
採用担当だったころの私の感覚では、面接や面談で仕事の中身・忙しい時期・評価の仕組み・異動できるかを聞かれても、印象は悪くなりませんでした。
入社後のことを具体的に考えている人だと受け取っていたんです。
特例子会社でどんな配慮が受けられるかは、特例子会社のリアルで中にいる立場から書いています。
7-5. 配慮を条件に求人を探すなら障害者専門の転職サービス、体調を整え直すなら就労移行支援
体調が保てていて次の職場を探すなら、障害者専門の転職サービス。体調や働くリズムを整え直してから進みたいなら、就労移行支援が向いています。
転職サービスのatGPとdodaチャレンジの違いは、精神障害の転職サイトはどっち?でくわしく比べています。
atGPがおすすめな人
- 配慮を条件に、障害者雇用の求人を紹介してほしい
- 入社したあとも、状況を気にかけてもらえる支えがほしい
- 東京・関西・名古屋のオフィスで、対面で相談したい
まずは無料の面談で、配慮の条件を伝えるところから始められます。
※運営は株式会社ゼネラルパートナーズ。利用は無料です。面談はオンライン・電話・対面(東京の本社・関西支社・名古屋支社)から選べ、入社後も定期的に状況確認の連絡があります(2026年10月時点の公式サイトより)。
dodaチャレンジがおすすめな人
- 地方に住んでいて、オンラインや電話で相談したい
- メールでも相談しながら、転職活動を進めたい
- 応募書類や面接の対策も、一緒に考えてほしい
相談しても、応募しなくても、料金はかかりません。
※運営はパーソルダイバース株式会社。相談や応募、就職先が決まるかどうかにかかわらず、料金はかかりません。オンラインカウンセリング・電話・メールなどで相談でき、地方に住んでいる人も使えます(希望の勤務地によっては、求人を紹介できない場合があります。2026年10月時点の公式サイトより)。
体調や働くリズムを整え直してから次へ進みたいなら、就労移行支援という道もあります。利用できるかどうかは、事業所や市区町村に相談してください。
私が2回目の休職でリワークに通った事業所の話は、atGPジョブトレIT・Webは評判通り?に書きました。
人事担当だったころ、私は就労移行支援事業所やエージェントの担当者と、求人や会社見学会・説明会などで直接やり取りする機会が多くありました。
このうち atGPジョブトレとミラトレは、支援員や利用している人の全体的なレベル・質が高いと感じてきました。
atGPジョブトレがおすすめな人
- 自分の障害に合ったコースで、訓練を受けたい
- 首都圏・名古屋・梅田の事業所に通える
- 相談や見学で、訓練の様子を確かめてから決めたい
まずは無料の相談・見学から始められます。
※運営は株式会社ゼネラルパートナーズ。相談・見学は無料です。障害別のコースは、うつ症状・発達障害・統合失調症・聴覚障害・難病の5つ。事業所は秋葉原(2か所)・大手町・お茶の水・横浜・名古屋・梅田の7か所が載っています(2026年10月時点の公式サイトより)。
ミラトレがおすすめな人
- 東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・兵庫の事業所に通える
- 職場を再現した環境で、働くリズムを取り戻したい
- まずは資料を取り寄せて、じっくり比べたい
資料請求と相談は無料です。
※運営はパーソルダイバース株式会社。7都府県(東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・兵庫)に15の事業所があり、職場を再現した環境での「擬似就労」が特徴です。資料請求・相談は無料です(2026年10月時点の公式サイトより)。
8. よくある質問

最後に、配慮について検索や知恵袋でよく見る疑問に、短く答えていきます。気になる質問から読んでみてください。
Q1. 配慮してもらえないのは違法ですか?
会社には合理的配慮の義務がありますが、違反した会社への罰則は設けられていません。
厚生労働省のQ&Aでは、罰金などを科すより、助言・指導・勧告という行政指導で、続けて雇用管理の改善を促すほうが有効だから、と説明されています。
過重な負担かどうかの判断に疑問があるときは、労働局長の助言・指導・勧告や調停の仕組みがあります(6-4)。
「違法かどうか」で白黒をつけるより、4段階の相談で改善を求めていく形になるんです。
(出典:厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】」A1-6・A4-4-4)
Q2. 障害を伝えずに働いていても(一般雇用でも)、配慮を頼めますか?
頼めます。1-1で書いたとおり、対象は障害者手帳を持つ人に限られません。
ただ、Q&Aでは、会社が必要な注意を払っても障害があると把握できなかった場合、合理的配慮の義務違反には問われないとされています。
会社が知らなければ、配慮は始まらないわけです。
どこまで伝えるかは、本人が決めてよいことです。障害を伝えて働くか、伝えずに働くかの考え方は、atGPとdodaチャレンジを比べた記事の4章で書いています。
(出典:厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】」A1-5-1)
Q3. 体調が悪い日だけ在宅勤務にしてほしい、は頼めますか?
お願いすること自体はできます。認められるかどうかは、会社との話し合い次第です。
2-1の在宅勤務の例のように、会社全体のルールとぶつかることもあります。会社が難しいと判断したときのことは、1-3で見たとおりです。
5-3の形で、「体調が悪い日」の目安と、在宅でできる仕事を具体的に示すと、会社も検討しやすくなりますよ。
Q4. 配慮をお願いしたら、評価が下がったり契約を切られたりしませんか?
合理的配慮の相談をしたことを理由に、解雇などの不利益な扱いをしてはいけない。会社はそう定めて、社員に知らせることになっています。
たとえば、就業規則や社内報、社内のホームページなどに書く形です。厚生労働省のリーフレットでも、相談体制の整備の1つとして挙げられています。
不安なときは、5-4の記録を残しながら相談を進めると安心です。
(出典:厚生労働省「合理的配慮指針」第6の4、厚生労働省「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」5ページ)
Q5. 自分の障害のことは、職場の全員に伝わってしまいますか?
全員に伝わるとは限りません。2-3で書いたとおり、上司や同僚にどこまで説明するかは、本人と十分に打ち合わせておくことになっています。
伝えてほしい範囲や、伝えてほしくないことがあるなら、配慮を相談するときに自分から先に伝えておくと安心です。
配属先への伝わり方は、2-3で紹介した記事で、採用担当の立場からまとめています。
Q6. 障害者雇用から一般雇用に切り替えてもらえますか?
雇用の区分を変えるかどうかは、会社との話し合いで決まることです。必ず切り替えてもらえる、というものではありません。
知恵袋(2025年5月)には、配慮がなく健常者と同じ仕事をしているので、一般雇用に戻せないか、という相談がありました。
回答には、区分の変更には会社の同意が必要で、得られなければ退職して再就職するしかない、という意見もありました。
切り替えたい理由が「配慮がないから」なら、まずは3章の分け方で、配慮の問題として相談してみるのが先かもしれません。
Q7. 配慮されすぎて、仕事が回ってこないのもつらいです
その気持ちも、伝えてよいことです。配慮は、増やすだけでなく、減らす方向にも見直せます。
5-3の「見直しの時期」を使って、「この配慮は外しても大丈夫そう」「この仕事に挑戦したい」と伝える形です。
4-4の私のように、少しずつ試して、早ければ戻す、という進め方もあります。
配慮が足りないときと、行き過ぎるときの両方は、障害者雇用のデメリット7つの2-6でくわしく書きました。
まとめ

配慮をお願いすることは、わがままではありません。会社には合理的配慮の義務があり、中身は本人と会社の話し合いで決まります。
「配慮されない」と感じたら、まず2章の5つの原因と、3章の3つの分け方で、何が起きているかを見分けます。そのうえで、相談の4段階を順に進めます。
- 直属の上司:困りごとを書き出して、お願いし直す(5章)
- 人事・社内の窓口・産業医:上司で動かないとき、言いにくいとき(5章)
- 支援機関:就労定着支援・障害者就業・生活支援センター・地域障害者職業センター・ハローワーク(6章)
- 労働局:職業安定部の助言・指導・勧告と調停(6章)
それでも変わらないときは、体調を守ることを先に置いて、職場を変える判断もしてよいんです(7章)。
私は、限界に近くなるまで「きつい」と言えませんでした。あなたは、その手前で一言を伝えてみてください。
●辞めるか残るかで迷ったときは、辞めどきの判断と転職の現実をまとめたこの記事も参考にしてください。↓



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