一般雇用で働いていた頃にうつと双極性障害を発症し、精神障害者保健福祉手帳を取得。就労移行支援を経て、大手企業の特例子会社へ。面接を受ける側と、面接をする側の両方に座りました。
はじめに

「就労移行支援 やめとけ」と検索したあなたは、いま次のどちらかではないでしょうか。
- 主治医や家族に勧められたけれど、ネットの評判を見て迷っている
- 通い始めたものの、「これ、意味あるのかな」と感じている
先に私の答えをお伝えします。「就労移行支援はやめとけ」は、半分正解です。
ただし、当てはまるのは制度そのものではありません。「合わない使い方」「合わない事業所」「合わない時期」の3つです。
この3つを避けられれば、就労移行支援は就職への近道になります。逆に1つでも当てはまったまま通い続けると、「やめとけ」と言いたくなる結果になりやすいんです。
少しだけ自己紹介をさせてください。私は一般雇用で3社を経験したあと、うつと双極性障害で精神障害者保健福祉手帳を取得しました。
そして就労移行支援に3か月通い、大手企業の特例子会社に障害者雇用で入社しています。いまは同じ会社で13年以上働いています。
その後、40代後半で一度休職しました。このときはリワーク(休職中の人が職場に戻るための訓練)として、もう一度就労移行支援を2か月使っています。つまり利用者として2回通ったことになります。
特例子会社の元採用担当として、応募者を面接する側にも座ってきました。就労移行支援事業所の担当者とは、求人や会社見学会、説明会で何度もやり取りをしています。
正直に言うと、1回目に通っていたとき「この講義、意味ないな」と感じた時間もありました。そのあたりも隠さずに書きます。
この記事で分かることは、次の4つです。
- 「やめとけ」と言われる7つの理由と、それが本当かどうか
- あなたが就労移行支援を「使うべき人」か「やめたほうがいい人」か
- 元採用担当から見た、通って意味があった人と、なかった人の違い
- 「辞めたい」と感じたときの対処法と、辞めた後の道
私の経歴は、プロフィールにまとめています。
1. 就労移行支援が「やめとけ」と言われる7つの理由

ネットで見かける「やめとけ」の理由は、だいたい7つに集約されます。あなたが不安に感じているのはどれでしょうか。ひとつずつ、本当のところを見ていきます。
1-1. まず30秒で分かる就労移行支援の基本(対象・原則2年・利用料)
就労移行支援とは、障害のある人が一般の会社への就職を目指して、訓練や就職活動の支援を受けられる福祉サービスです。障害者総合支援法(障害のある人の暮らしや仕事を支える福祉サービスを定めた法律)にもとづいています。
「やめとけ」の理由を読み解くには、次の3つの基本を知っておくと話が早いんです。
- 対象:一般の会社で働くことを希望していて、訓練や職場探しを通じて就職が見込まれる障害のある人。会社に在籍したまま、一時的に支援が必要な人(休職中など)が対象になる場合もある
- 期間:原則24か月(2年)。市町村審査会(市区町村が専門家の意見を聞いて判断する場)で必要と認められた場合に限り、最大1年まで延長できる
- 利用料:世帯の収入で月の上限額が決まる
(出典:厚生労働省「就労移行支援について」)
利用料の上限は、次の4区分です。ここでいう「世帯」は、18歳以上なら本人とその配偶者だけで判断されます。親と同居していても、親の収入は入りません。
- 生活保護を受けている世帯:0円
- 住民税が非課税の世帯:0円
- 住民税が課税で、所得割16万円未満の世帯:月9,300円
- それ以外の世帯:月37,200円
(出典:東京都福祉局「障害福祉サービス及び障害児支援の利用者負担」)
私が2回目に通ったときは、共働きで課税世帯だったので月9,300円でした。安くはありません。
それでも、毎日のプログラムと通勤の練習ができたことを考えると、払った価値はあったと思っています。費用の細かい話は、atGPジョブトレIT・Webの記事に書きました。
1-2. 理由①②:就職できる保証はない/訓練のレベルが合わない
これは本当です。就労移行支援に通えば必ず就職できる、という仕組みではありません。
理由は、事業所ごとの差がとても大きいからなんですよね。厚生労働省が公開している調査報告書では、ある政令指定都市の事例が紹介されています。
1年間に定員の50%以上を就職させた事業所が全体の30%程度だったのに対し、就職者が定員の20%未満の事業所も35%程度あったそうです。報告書はこの状態を「二極化」と表現していました。
(出典:厚生労働省「地域における就労移行支援及び就労定着支援の動向及び就労定着に係る支援の実態把握に関する調査研究」(令和5年3月))
もう一つの「レベルが合わない」も、よく聞く声です。知恵袋には、クローズ(障害を伝えずに働くこと)でバリバリ働いてきた人が「事業所のレベルが低すぎる」と書き込んだ相談もありました。
じつは私も、1回目に通ったときに同じことを感じています。社会人経験が5年以上あったので、実務に近い訓練の事業所を選んだのですが、それでも身だしなみや敬語、名刺交換といった基礎の講義はありました。
このときの正直な気持ちと、あとから振り返って思ったことは、4章で詳しく書きますね。就職の保証がないことも、レベルが合わないことも、根っこは「どの事業所を選ぶか」でほとんど決まります。
1-3. 理由③④:支援員の質と相性にばらつきがある/利用者どうしの雰囲気が合わない
支援員(事業所で訓練や相談を担当する職員)の質と相性は、事業所によっても、人によっても違います。ここが「やめとけ」と言われる大きな理由の一つです。
知恵袋には「支援員は素人が多く、私の特性を理解していなかった」「新しく入ったスタッフが苦手」といった相談が並んでいました。
支援員は、国家資格が必須の仕事ではありません。経験の浅い人と、企業での経験が長い人が同じ事業所にいることも珍しくないんです。
一方で、当たりの支援員に出会えることもあります。私が2回目に通った事業所の担当は、転職エージェントの経験があり、社会人歴も長い方でした。人事担当を経験していた私でも、話していて勉強になったほどです。
利用者どうしの雰囲気も同じです。年齢層や障害の種類、就職への意欲の強さは、事業所ごとにかなり違います。知恵袋の1位の相談者は、「利用者どうしの交流が禁止で、あいさつもためらう」と書いていました。

支援員さんと合わなかったら、もう辞めるしかないんですか?

いきなり辞めなくても大丈夫ですよ。担当を変えてもらう、別の事業所に移るといった方法もあります。6章で具体的な手順を書きますね。
支援員と雰囲気は、パンフレットやホームページでは分かりません。見学で実際に会って話してみないと見えない部分です。
1-4. 理由⑤:通所中は給料が出ず、アルバイトも原則できない
就労移行支援は「働くための訓練」なので、通っている間に給料は出ません。むしろ前の項目で書いたとおり、世帯によっては利用料がかかります。
さらに、通所中のアルバイトは原則として認められていないことが多いんです。たとえば札幌市は、短期間のアルバイトであっても「支援を受けずに一般就労することが可能な程度まで能力が高まっているのであれば、サービスの対象者にはなじまない」として、利用中のアルバイトを認めていません。
(出典:札幌市「就労系サービスに関する手引き(Q&A集)」(令和6年7月))
ただ、アルバイトの扱いは市区町村によって判断が分かれます。例外が認められる場合もあるので、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口に確認してみてください。
収入がない期間が続くと、気持ちも追い詰められていきますよね。生活費の見通しが立たないまま通い始めるのは、「やめとけ」が当てはまるケースの一つです。これは2章で詳しく書きます。
1-5. 理由⑥:「からくり」への不信感(国と自治体からの給付で運営される仕組み)
「からくり」と言われるのは、事業所の収入の仕組みのことです。事業所の収入の中心は、国と自治体から支払われる給付金(福祉サービスの費用として支払われるお金)なんですよね。
この給付金には、2つの特徴があります。
- 利用者1人が1日通うごとに計算される(日単位)
- 1日あたりの金額は、就職した人が6か月以上働き続けている割合(定着率)によって変わる
(出典:厚生労働省「就労移行支援について」)
1つ目だけを見ると、「長く通わせるほど事業所が得をする」ように見えます。知恵袋にも「2年通わせて利用料をもらうというスタンスだった」という書き込みがありました。

じゃあ、事業所はわざと就職させないで、長く通わせているんですか?

そういう事業所がゼロとは言えません。ただ、就職させて定着させないと、1日あたりの金額そのものが下がる仕組みなんです。長く通わせるだけの事業所は、結果的に経営が苦しくなりますよ。
「からくり」への不信感は、半分当たっていて、半分は誤解です。見分ける手がかりは、その事業所の「就職後6か月の定着率」を聞いてみることだと私は思います。
1-6. 理由⑦:原則2年という期限が焦りを生む
先ほどの基本で書いたとおり、就労移行支援は原則2年です。この期限が、利用者の焦りにつながることがあります。
知恵袋には「通所を始めて1年2か月。就職の見通しが立たず不安」という30代後半の方の相談がありました。延長は審査を通った場合だけなので、残りの期間が減っていくこと自体がプレッシャーになるんですよね。
ただ、2年は「上限」であって、2年通わなければいけないわけではありません。私の場合、1回目は3か月、2回目は2か月で卒業しています。短く使ったからこそ見えたことは、4章で書きます。
7つの理由のうち、①〜④は「どの事業所を選ぶか」、⑤〜⑦は「制度の仕組み」から来ています。次の2章では、この7つを踏まえて、あなたにとって「やめとけ」が当てはまるかどうかを見分ける方法をお伝えします。
2. 「やめとけ」が当てはまる人・当てはまらない人

1章の7つの理由を読んで、「結局、自分は使ったほうがいいの?」と思った方もいるかもしれません。この章では、やめたほうがいい人と使ったほうがいい人を分けて、最後に3分でできるチェック表を用意しました。
2-1. やめたほうがいい人(体調がまだ不安定・すぐ働ける・生活費が続かない・一般雇用で働きたい)
次の4つのどれかに当てはまる人は、いまは就労移行支援を使わないほうがいいと私は考えています。
- 体調がまだ不安定で、決まった時間に外出するのが難しい人
- すでに働く準備ができていて、すぐに働ける人
- 通所中の生活費の見通しが立たない人
- 障害を伝えずに一般雇用で働きたい人
1つ目は、就労移行支援が「毎日通うこと」を前提にしたサービスだからです。通所そのものが負担になる時期に無理をすると、「通えない自分」を責めて、かえって調子を崩しかねません。
まずは主治医と相談して体調を整え、生活リズムから作り直す段階だと思います。通う日数を減らす方法は、週5がきつい人向けの記事に書きました。
2つ目は、通う時間そのものがもったいない場合です。自分の障害特性と、必要な配慮を人に説明できる。生活リズムも安定している。
そんな人は、障害者専門の転職サイトから直接応募したほうが早いこともあります。採用する側から見た理由は、この後の3-3で書きますね。
3つ目は、1章の1-4で書いたとおり、通所中は給料が出ず、アルバイトも原則できないからです。お金の不安を抱えたまま通うと、訓練に集中できません。
4つ目は、就労移行支援の多くが障害者雇用(障害を会社に伝えたうえで、配慮を受けて働く雇用の形)での就職を前提に支援しているからです。
知恵袋には「気持ちが変わって一般のクローズで働きたくなったので、辞めたい」という相談もありました。目指す働き方と、事業所の支援の方向が合っているかは、通う前に確かめておきたいところなんです。
2-2. 使ったほうがいい人(ブランクが長い・障害者雇用が初めて・配慮事項を整理したい)
逆に、次のような人には、就労移行支援を使う価値が大きいと思います。
- 同じような理由で、仕事が続かなかった経験がある人
- 仕事から離れている期間(ブランク)が長く、生活リズムを戻したい人
- 障害者雇用が初めてで、配慮してほしいことを言葉にできていない人
- 休職中で、復職に向けて通勤と仕事の感覚を取り戻したい人
1つ目は、まさに私のことです。私は一般雇用で3社を経験しましたが、環境を変えても同じところで倒れてしまいました。いま振り返ると、問題は会社選びではなく、働き方の枠組みそのものにあったんですよね。
あなたも、「次の会社こそは」と転職を繰り返していませんか? そうだとしたら、働く前に自分の特性と必要な配慮を整理する時間が必要なのかもしれません。就労移行支援は、その整理を支援員と一緒にできる場所です。
2つ目と3つ目は、就労移行支援のいちばん得意な分野です。毎日決まった時間に通うこと自体が、生活リズムを戻す練習になります。配慮事項の整理は、応募書類の作り方とセットでナビゲーションブックの記事で詳しく書きました。
4つ目は、私の2回目の使い方です。休職中の利用は、市区町村が個別に判断することが多い点には注意してください。私のケースは4章で詳しく書きます。
2-3. 制度ではなく「事業所」が合っていないだけの人
「就労移行支援は意味ない」と感じている人の中には、制度ではなく、いま通っている事業所が合っていないだけの人も少なくありません。
就労移行支援事業所は、事業所ごとに訓練の中身も支援員も利用者層もまったく違います。1章で書いたとおり、就職者を多く出している事業所と、ほとんど出せていない事業所の差も大きいんです。
私自身、1回目に3か所を見学したとき、2か所は「ここは自分には合わなそうだ」と感じて選びませんでした。理由は次の4つです。
- 事業所の数が少なく、就職の実績がまだあまりなかった
- 質問したときの答えがあいまいだった
- 講義の多くを、基礎的なビジネスマナーや障害理解に割いていた
- 1日の講義時間が短かった
誤解のないように書いておくと、基礎的なマナーや障害理解の講義が悪いわけではありません。社会人経験のない人や、自分の障害を理解するところから始めたい人には、むしろ必要な内容です。
ただ、当時の私は社会人経験が5年以上あり、実務に近い訓練を求めていました。目的と中身が合っていなかった、ということなんです。
もしあなたがいま「意味ない」と感じているなら、その不満は「就労移行支援そのもの」に向いていますか? それとも「この事業所の訓練内容や対応」に向いていますか?
後者なら、辞める前に事業所を変えるという道があります。事業所の選び方は5章、変え方は6章で書きますね。
2-4. 3分でできるセルフチェック
ここまでの内容を、チェック表にまとめました。当てはまる答えの欄を見てください。
| 質問 | 「はい」の場合 | 「いいえ」の場合 |
|---|---|---|
| ① 週3日以上、決まった時間に外出できる体調ですか? | 通所を考えられる段階 | まず主治医と相談し、体調と生活リズムを整える |
| ② 同じような理由で、仕事が続かなかった経験がありますか? | 使う価値が大きい | ③へ |
| ③ 自分の障害特性と必要な配慮を、人に説明できますか? | 転職サイトから直接応募する道もある | 使う価値が大きい |
| ④ 通所中の生活費の見通しは立っていますか? | 通所を考えられる | 先に生活費の見通しを立てる |
| ⑤ いま通っていて、不満は「事業所の訓練内容や対応」に向いていますか? | 事業所を変える道を検討する | 6章の対処法へ |
この表は、あくまで考えを整理するための目安です。①で迷う場合は、主治医の意見を必ず聞いてください。

②は「はい」で、③は「いいえ」でした。私は使ったほうがいいんでしょうか?

その組み合わせは、昔の私とまったく同じです。私はそこで就労移行支援を使って、3か月で特例子会社に入れました。次の章では、採用する側から見て「通って意味があった人」がどんな人だったかをお話ししますね。
「やめとけ」が当てはまるかどうかは、制度の良し悪しではなく、あなたの状態と目的、そして事業所との相性で決まります。次の3章では、私が採用担当として見てきた「通って意味があった人」と「そうでなかった人」の違いをお話しします。
3. 元採用担当が見た「就労移行支援を経た応募者」と「経ていない応募者」の違い

「就労移行支援に通ったことって、本当に選考で見られているの?」。通うかどうか迷っている人ほど、ここが気になりますよね。
この章では、特例子会社の元採用担当として応募者を見てきた私の感覚をお話しします。なお、ここに書くのはあくまで私個人の受け止め方で、勤務先の選考基準ではありません。
3-1. 選考で本当にプラスになっていたこと
就労移行支援に通っていることは、私にとって安心材料のひとつでした。特に大きかったのは、「通所を続けてきた記録」と「支援員の存在」の2つです。
人事を担当していた頃、私は就労移行支援事業所や転職エージェントの担当者と、求人や会社見学会、説明会で何度もやり取りをしていました。応募者の後ろに、どんな支援がついているのかが見えやすい立場だったんです。
その中で感じていたのが、支援員が同行して会社見学に来る人と、本人だけで面接に来る人とでは、内定率も入社後の定着率もかなり違うということでした。
支援員が一緒にいると、本人が言いにくいことを補足してもらえます。入社後に何かあったときの相談先も、最初から見えているんですよね。
精神障害のある方の応募書類を見るとき、就労移行支援などの支援機関を使っているかどうかも、私にとって大きな判断材料のひとつでした。通所を続けてきたこと自体が、生活リズムと体調を保ってきた実績として読めるからです。
3-2. 通っていてもプラスにならなかったケース
一方で、就労移行支援に通っていたのに、選考でプラスにならなかった人もいました。私が見てきた中では、次の2つのどちらかに当てはまる人です。
- 就労移行支援を終えてから、応募までの間が空いてしまっている人
- 自己理解ができていない人(自分の障害特性や、必要な配慮を自分の言葉で説明できない人)
1つ目について、私は「通所で保っていた生活リズムが、いまも続いているのか」が見えにくくなると受け止めていました。3-1で書いた「通所を続けてきた記録」は、応募の時点に近いほど説得力があるんです。
2つ目は、就労移行支援に通ったかどうかに関係なく、選考でいちばん差がつくところでした。私がいた会社では、面接への支援員の同席は、基本的にご遠慮いただいていました(理由がある場合は個別に対応していました)。本人の言葉で、自己理解や配慮事項を聞きたかったからです。
支援員がどれだけ優秀でも、面接で答えるのはあなた自身です。通所中に「自分のことを自分の言葉で話す練習」ができていたかどうかで、結果が分かれていたと感じます。
面接での具体的な答え方は、特例子会社の面接の記事にまとめました。
3-3. 通っていなくても採用された人に共通していたこと
就労移行支援に通っていなくても、採用された人はもちろんいました。共通していたのは、応募書類と面接の受け答えから、障害特性と配慮事項がはっきり分かる人だったことです。
採用する側が知りたいのは、「この人は、どんな環境なら力を発揮できるのか」「どんな配慮があれば安定して働けるのか」なんですよね。それが書類と面接で伝われば、どこで準備してきたかは大きな問題になりません。
通っていない場合でも、主治医やハローワークと連携していることが伝われば、私には同じように安心材料になっていました。困ったときに相談できる先があることが見えるからです。

就労移行支援に通わなくても、自分で配慮事項をまとめれば大丈夫ということですか?

自分でまとめられるなら、それで十分伝わります。ただ、一人だと「自分では気づけない特性」が抜けやすいんです。そこを支援員と一緒に掘り下げられるのが、就労移行支援のいちばんの価値だと私は思っていますよ。
配慮事項を書面にまとめる方法は、ナビゲーションブックの記事を参考にしてみてください。
3-4. 採用側から見た「意味があった就労移行支援」の条件
ここまでをまとめると、採用する側から見て「通って意味があった」と感じる条件は、次の3つです。
- 卒業から応募までの間が空いておらず、生活リズムが続いていることが伝わる
- 自分の障害特性と必要な配慮を、自分の言葉で説明できる
- 困ったときに相談できる先(支援員・主治医など)があることが見える
この3つの根っこにあるのは、採用担当者が気にしているのは病名ではなく「勤務の安定性」だということです。
具体的には、いまの体調、自己理解の深さ、配慮事項の明確さ、続けて働けそうか、就職の準備ができているか、困ったときに相談できるか。私はこうした点を見ていました。
裏を返せば、就労移行支援は「通ったこと」そのものではなく、「通っている間に何を身につけたか」で評価が決まります。採用側の判断の軸は、障害者雇用で人事が見ている本音の記事でさらに詳しく書いています。
就労移行支援が「意味ない」かどうかは、通ったあとの選考ではっきり差になって表れます。次の4章では、私が利用者として2回通ったときの体験を、うまくいったことも「意味ない」と感じたことも含めてお話しします。
4. 【体験談】2回使った私が「やめとけ」と思わなかった理由と、2年を使い切らなかった使い方

ここからは、私が利用者として就労移行支援に2回通ったときの話です。1回目は就職のため、2回目は休職からの復職のため。目的も期間もまったく違う使い方でした。あなたの状況に近いほうを、参考にしてみてください。
4-1. 1回目:30代中盤、一般雇用から障害者雇用へ。3か月で特例子会社に入るまで
1回目は、3か月通って特例子会社への入社につながりました。いま振り返っても、ここを飛ばして直接就職していたら、続かなかったと思っています。
30代中盤、一般雇用の3社目で働いていた私は、うつを再発して休職しました。休んでも体調が戻らず、入院することになります。そこでついた診断が、双極性障害でした。
退院後、病院の社会福祉士(生活や福祉サービスの相談に乗ってくれる専門職)から勧められて、初めて就労移行支援という存在を知ったんです。正直、それまで名前すら聞いたことがありませんでした。
見学したのは3か所です。選ばなかった2か所の理由は2-3で書いたので、ここでは選んだ決め手を書きますね。
- 希望に合った就職先の求人が来ていたこと(大手企業への就職実績があった)
- 障害特性が似ている人が多かったこと
- 講義や訓練の内容が、実際の業務に近かったこと
選んだのは、当時のウイングル(現在のLITALICOワークス)です。十数年前の話なので、いまの事業所の中身とは違う部分もあると思います。
3か月ほど通って、フルタイムで働ける体力と、仕事の感覚を少しずつ取り戻しました。そして休職から約1年後、特例子会社に障害者雇用で入社しています。
4-2. 2回目:40代後半、休職中にリワーク目的で2か月だけ使った
2回目は、特例子会社に入って13年目のことです。一般雇用の頃に近い量の仕事をこなすうちに体調を崩し、休職しました。
休養で少しずつ意欲が戻ってきたとき、次に考えたのが「通勤とフルタイム勤務に、どうやって戻るか」でした。そこで思い浮かんだのが、1回目に通った就労移行支援だったんです。
事業所を選ぶときの条件は2つでした。
- 通勤の練習になるよう、電車で30分前後で通える場所であること
- これまで学んだことのなかった、IT・Web系の訓練があること
人事・採用の仕事で事業所とのつながりが多かったので、候補はある程度絞り込めました。選んだのは、atGPジョブトレIT・Webです。
ここで壁になったのが、短期間でも受け入れてもらえるのか、という点でした。調べて初めて知ったのですが、就労移行支援は通常、6か月から1年半くらいの利用を前提に受け入れているんです。
1か月では最低限のプログラムも、支援計画(利用者ごとの訓練の目標と内容をまとめた計画)も組めません。
私の場合は、仕事で取引のあった会社で担当者を知っていたこともあり、「最低でも2か月」という条件で、リワークとして受け入れてもらえました。短期での利用を考えているなら、説明会や電話で、受け入れてもらえるかを先に確かめておいてください。
最初は週3日通所・週2日在宅から始め、復職の直前には週5日通えるように慣らしていきました。訓練ではWebデザインとHTML(ホームページを作るための基本の言語)の基本を学び、出席率は100%で通い切れました。
手続きや費用、1日の流れは、atGPジョブトレIT・Webの記事に詳しく書いています。休職から復職までの全体の流れは、休職から復職の体験談にまとめました。
IT・Webの基本を身につけながら就職や復職を目指したい人は、見学で訓練の中身を確かめてみてください。
4-3. 2回とも2年を使い切らなかった「短く使う」という選び方
就労移行支援は原則2年ですが、私は2回とも2年を使い切っていません。1回目は3か月、2回目は2か月です。
短く使えたいちばんの理由は、通う前から目的がはっきりしていたことだと思います。1回目は「障害者雇用で就職すること」と「実務の感覚を取り戻すこと」。2回目は「通勤とフルタイムに戻ること」と「Webの基本を身につけること」。
目的が決まっていたので、事業所選びにも訓練の受け方にも迷いがなかったんです。
知恵袋には「働いた経験がある人には、就労移行支援は時間の無駄では?」という相談がありました。私の答えは、「経験がある人ほど、目的を決めて短く使えば無駄にならない」です。
ただし、短くしすぎるのは逆効果でした。2回目、私は最初「1か月で復職しよう」と計画していました。
実際に通ってみると、1か月では生活リズムも仕事の感覚も戻りきらなかったと思います。2か月あったからこそ、復職初日からフルタイムで働けたんです。

短く使いたい場合、何か月くらいを目安にすればいいんでしょうか?

人によって違うので、一律には言えないんです。私は「自分で考えた期間より少し長め」がちょうどよかったですね。通い始めてから支援員と一緒に見直すのがいいと思いますよ。
4-4. 正直「意味ない」と感じた講義もあった
ここまで良かった話ばかり書いてきましたが、正直に言うと、1回目に通っていたとき「これは意味ないな」と感じた講義もありました。
実務に近い訓練の事業所を選んだとはいえ、基礎的な講義はやはりあったんです。身だしなみ、あいさつ、敬語、メモの取り方、ビジネス文書、ビジネスメール、名刺交換。
新入社員の頃に研修で習ったような内容で、社会人経験が5年以上あった私には、聞いたことのある話ばかりでした。
いろいろな経験の人が通っているので、こうした講義があるのは当たり前のことです。そして振り返ってみると、忘れていたこともありました。新入社員の頃はピンと来ていなかったことに、あらためて気づけた場面もあったんですよね。決して無駄な時間ではなかったと、いまは思っています。
一方、2回目は「意味ない」と考える暇も余裕もありませんでした。2か月しかない中で、Webの知識を少しでも身につけようと必死だったからです。
あなたがいま「意味ない」と感じているなら、その講義が「自分にとって本当に不要なのか」「忘れていたことの見直しになるのか」を一度考えてみてください。それでも合わないと感じるなら、訓練内容の見直しを支援員に相談する方法があります。6章で具体的に書きますね。
2回通って分かったのは、就労移行支援が意味を持つかどうかは、目的と期間を自分で決められるかにかかっているということでした。次の5章では、その目的に合った事業所をどう選ぶかをお話しします。
5. 「やめとけ」にならない事業所の選び方

1章で見たとおり、「やめとけ」の理由の多くは事業所ごとの差から来ています。つまり、事業所選びさえ間違えなければ、多くは避けられるんです。
この章では、私が2回の事業所選びと、採用担当として事業所とやり取りしてきた経験から、選び方のポイントをまとめます。
5-1. 目的に合わせて選ぶ(実務に近い訓練・IT系・障害別コース・職場の再現)
事業所選びは、「あなたが通って何を得たいか」から始めるのがいちばん失敗しません。私が1回目に実務に近い訓練の事業所を選んだのも、社会人経験があったからでした。
就労移行支援事業所には、大きく分けて次のようなタイプがあります。
- 実務に近い訓練が多い事業所:事務作業やパソコン業務など、入社後の仕事に近い訓練が中心
- IT・Web系に強い事業所:プログラミングやWebデザインなど、専門的なスキルを学べる
- 障害別のコースがある事業所:同じ障害の人どうしで、特性に合わせた訓練を受けられる
- 職場を再現した訓練がある事業所:会社に近い環境で、実際の仕事の流れを体験できる
たとえば、社会人経験があって仕事の感覚を取り戻したい人なら、実務に近い訓練や、職場を再現した訓練が向いています。自分の障害の理解から始めたい人なら、障害別のコースが合うかもしれません。
目的と事業所のタイプがずれると、2-3で書いた私の見学のときのように「ここは違う」となってしまうんですよね。
5-2. 就職実績と定着率の「見方」
就職実績を見るときは、「何人就職したか」だけでなく、「就職した人が6か月以上続いているか」まで聞いてみてください。
1章の1-5で書いたとおり、事業所の収入は、就職した人が6か月以上働き続けている割合で変わります。定着率は、事業所にとっても大事な数字なんです。ここをはっきり答えられる事業所は、就職後の支援まで考えていると判断しやすいと思います。
数字を聞くときは、次の3つを確かめると見え方が変わります。
- 就職者数は、何人の利用者のうちの人数か
- 就職後6か月以上続いている人の割合はどのくらいか
- どんな会社・職種に就職しているか
3つ目は、私が1回目にいちばん重視したポイントでした。希望に合った就職先の求人が来ているかどうかで、通ったあとの自分を想像しやすくなるんですよね。
5-3. 見学・体験で確かめること
事業所の良し悪しは、見学と体験利用でしか分かりません。できれば2〜3か所は見比べてみてください。私も1回目は3か所を見学して、比べたからこそ決め手がはっきりしました。
見学のときに私が実際に聞いたのは、次の5つです。
- どんな障害の人が多いのか
- 就職先はどのようなところか
- どのような求人が来ているか
- 1日の流れの中で、どのような講義があるか
- 就職するまでにかかる期間はどのくらいが多いか
1章で書いた「支援員との相性」や「利用者の雰囲気」は、パンフレットでは分かりません。見学のときに、質問への答え方や、訓練中の部屋の様子を見ておくのがおすすめです。
見学で聞く質問は、就労移行支援の見学で聞く質問20にまとめています。
5-4. 見学先の候補(atGPジョブトレ/ミラトレ/atGPジョブトレIT・Web/Neuro Dive)
見学先を探すとき、私がまず候補に挙げてほしいのが次の4つです。どれも業界大手で専門性が高く、情報量も多い事業所です。人事担当として関わってきた中でも、支援員や利用者のレベルが全体的に高いと感じていました。
| サービス名 | 種類・特徴 | おすすめな人 | 公式サイト |
|---|---|---|---|
| atGPジョブトレ | 障害別のコースがあり、同じ障害の人どうしで訓練できる | 自分の障害の特性に合った訓練を受けたい人 | 障がい者の転職サポート実績15年以上のatGPと連携!【atGPジョブトレ】
|
| パーソルチャレンジ・ミラトレ | 職場を再現した環境で、実際の仕事に近い訓練ができる | 社会人経験があり、実務の感覚を取り戻したい人 | パーソルチャレンジ・ミラトレ
|
| atGPジョブトレIT・Web | デジタルハリウッドと提携し、Webデザイナー・ITエンジニア・動画編集の3コースがある | IT・Web系の仕事を目指したい人 | 障害者専門のIT・Web就労支援サービス【atGPジョブトレIT・Web】
|
| Neuro Dive | AIやデータサイエンスなど、先端のITスキルを学べる | AI・IT系の仕事に興味がある人 | AIやデータサイエンスが学べるIT特化の就労移行支援【Neuro Dive】
|
※各サービスの詳細な条件・対応エリアは変更されることがあります。申し込み前に各公式サイトでご確認ください。
私が2回目に通ったのはatGPジョブトレIT・Webです。当時はまだ事業所が少なくて知らなかったのですが、いまはNeuro Diveもあります。
当時これを知っていて、通える範囲にあれば、間違いなく候補に入れていたと思います。AI・IT系に興味がある人には、真っ先に勧めたい事業所です。
どの事業所も、見学や相談は公式サイトから申し込めます。まずは2〜3か所を見比べて、5-1で考えた目的に合う事業所を探してみてください。
迷ったら、障害別のコースで自分の特性に合った訓練が受けられるatGPジョブトレから見学してみてください。
事業所選びの基本は、目的を決めて、数字を正しく聞いて、見学で比べることです。次の6章では、すでに通っていて「意味ない」「辞めたい」と感じている人に向けた対処法をお話しします。
6. 通っていて「意味ない」「辞めたい」と感じたときの対処法

いま通っていて、「この時間、意味あるのかな」「もう辞めたい」と感じている方へ。その気持ちは、甘えでもわがままでもありません。
ただ、辞める前に試せることがいくつかあります。この章では、辞める前の手順と、辞めると決めたときの伝え方を順番にお話しします。
6-1. まず支援員に「目的と訓練内容のずれ」を伝える
辞めたいと感じたら、最初にやってほしいのは、支援員に「何がずれているのか」を伝えることです。「辞めたい」だけを伝えるより、ずっと話が前に進みやすくなります。
就労移行支援の訓練は、支援計画にもとづいて行われています。支援計画は、あなたの希望をもとに作られ、必要に応じて見直されるものです。裏を返せば、あなたが違和感を口にしない限り、訓練の中身は変わりにくいんですよね。
知恵袋の1位の相談者は、通い始めて2か月で「通う意味が分からない」と感じ、辞めたいと申し出ていました。すると事業所から、「最低でも6か月は通いながら転職するのがいい」と言われたそうです。「辞めたい」とだけ伝えると、こうして引き止めの話になりやすいんです。
伝えるときは、次のように「目的」と「いまの訓練」の差を具体的に言ってみてください。
- 「事務職で働きたいので、パソコンの実務に近い訓練を増やしたいです」
- 「ビジネスマナーは前の会社で経験があるので、応募書類の準備に時間を使いたいです」
- 「週5日の通所がきついので、日数を相談したいです」
4-4で書いたとおり、私も1回目に基礎の講義で「意味ない」と感じたことがあります。振り返れば得るものもありましたが、あのとき支援員に一言相談していれば、もっと早く気持ちを切り替えられたかもしれません。
6-2. 通所日数・在宅訓練・担当者の変更を相談する
「きつい」「合わない」の原因が、通い方や担当者にあるなら、辞めなくても変えられることがあります。
通所の日数は、最初から週5日でなくてもかまいません。4-2で書いたとおり、私も2回目は週3日通所・週2日在宅から始めて、少しずつ週5日に慣らしていきました。
日数の減らし方や在宅訓練の組み合わせ方は、週5がきつい人向けの記事に詳しく書いています。
担当の支援員と合わない場合は、担当を変えてもらえないか相談する方法もあります。担当者本人に言いにくければ、事業所の管理者やサービス管理責任者(事業所で支援計画の作成と管理に責任を持つ職員)に相談してみてください。

担当を変えてほしいなんて言ったら、気まずくなりませんか?

気持ちは分かります。でも、支援員との相性で通えなくなるほうが、あなたにとっても事業所にとっても損なんです。「相性の問題なので」と伝えれば、角は立ちにくいですよ。
6-3. 事業所を変える(転所)という選択肢
2-3で書いたように、あなたの不満が「この事業所の訓練内容や対応」に向いているなら、就労移行支援を辞めるのではなく、事業所を変えるという道があります。
事業所を変えるときは、新しい事業所を見学して、市区町村の窓口で手続きをする流れが一般的です。ここで気をつけたいのが、利用期間の扱いです。
事業所を変えても、それまで通った期間がリセットされるとは限りません。残りの期間がどれだけあるかは、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口に確認してみてください。
次の事業所を選ぶときは、5章の選び方をもう一度使ってみてください。今度は「前の事業所の何が合わなかったのか」が分かっているぶん、見学で確かめるポイントがはっきりしているはずです。
6-4. 辞める前に確認したいデメリット(利用期間の残り・もう一度使えるか)
それでも辞めると決めたなら、次の3つを知ったうえで決めてください。
- もう一度使えるかどうかは、市区町村の判断になる
- 就職後に受けられるはずだった定着支援がなくなる
- 通所で作った生活リズムが途切れやすい
1つ目について、厚生労働省は、一度利用を終えた人がもう一度使う場合に、新しく2年間の利用を認めるか、前回からの続きとして1年間の延長だけを認めるかを、市町村の判断に任せるとしています。
つまり、辞めたあとに「やっぱりもう一度」と思っても、同じ条件で使えるとは限らないんです。
(出典:沖縄県「厚生労働省Q&Aについて」(平成22年度障害福祉サービス事業者等集団指導資料))
2つ目は、就職後のフォローのことです。就労移行支援を経て就職すると、入社後も事業所が職場定着の相談に乗ってくれます。3-1で書いたように、採用する側から見ても、困ったときの相談先が見えていることは安心材料でした。辞めると、この支えがなくなります。
3つ目は、3-2で書いた「終わってから間が空いた人」と同じ状態になりやすいということです。辞めたあとは、次の行き先をできるだけ早く決めておくのがおすすめです。行き先の候補は7章で紹介しますね。
6-5. 辞めると決めたときの伝え方
辞めると決めたら、担当の支援員に、理由と次の予定を短く正直に伝えれば十分です。
就労移行支援は、あなたと事業所が契約して利用するサービスです。続けるかどうかを決めるのは、あなた自身なんですよね。引き止められたとしても、申し訳なく思う必要はありません。
伝えるときは、次の3つを押さえておくと話がスムーズです。
- 理由:「目指す働き方と訓練内容が合わなかった」など、一言で
- 次の予定:「別の事業所に移る」「転職サイトで就職活動を始める」「しばらく体調を整える」など
- 退所の日:いつまで通うか
退所の手続きや書類については、そのとき支援員に聞いてみてください。事業所に正直に理由を伝えておくと、あとで別の事業所に移るときや、もう一度使いたくなったときにも、話がこじれにくくなります。
辞める前に「ずれを伝える」「通い方を変える」「事業所を変える」の3つを試して、それでも合わなければ辞めるのも立派な選択です。次の7章では、辞めたあと、あるいは最初から使わないと決めた人の選択肢を紹介します。
7. 辞めた後・使わないと決めた人の選択肢

就労移行支援を使わなくても、就職への道はいくつもあります。「辞めたら終わり」ではありません。
この章では、あなたの状態に合わせた4つの選択肢を紹介します。2-4のチェック表の結果と照らし合わせながら読んでみてください。
7-1. 障害者専門の転職サイトで直接応募する
すでに働く準備ができている人は、障害者専門の転職サイトから直接応募するのがいちばん早い道です。
3-3で書いたとおり、就労移行支援に通っていなくても、応募書類と面接で障害特性と配慮事項がはっきり伝われば、採用される人はいました。
障害者専門の転職サイトには、担当者(キャリアアドバイザー)が求人の紹介から応募書類の添削、面接の準備まで手伝ってくれるサービスもあります。代表的なのは、次の2つです。
- アットジーピー(atGP):障害者雇用の求人を専門に扱う転職サイト。就労移行支援のatGPジョブトレと同じ、株式会社ゼネラルパートナーズが運営している
- dodaチャレンジ:転職サービスdodaと同じパーソルグループが運営する、障害のある人向けの転職支援サービス
2つの違いや使い分けは、atGPとdodaチャレンジを比較した記事で詳しく書いています。就労移行支援を辞めたばかりの人は、6-4で書いたように、生活リズムが途切れないうちに登録しておくのがおすすめです。
障害者雇用の求人を幅広く見たい人は、まずatGPに登録してみてください。
キャリアアドバイザーに相談しながら進めたい人は、dodaチャレンジも登録しておくと比べやすいですよ。
7-2. 生活リズムから整えたい人は自立訓練(エンラボカレッジ)
毎日決まった時間に通うこと自体がまだ難しい人には、自立訓練(生活訓練)という選択肢があります。
自立訓練(生活訓練)は、自立した日常生活を送るために必要な訓練や、生活についての相談を受けられる福祉サービスです。就労移行支援が「就職」を目指すのに対して、自立訓練は「生活する力を整えること」が目的なんですよね。
(出典:厚生労働省「障害福祉サービスについて」)
2-1で書いた「体調がまだ不安定で、決まった時間に外出するのが難しい人」は、就労移行支援の前に、こちらから始めるのも一つの方法です。生活リズムが整ってから、あらためて就労移行支援を考えても遅くありません。
自立訓練の事業所として紹介したいのが、エンラボカレッジです。発達の凸凹(得意と不得意の差が大きい特性)がある10代〜30代の方が多く利用している自立訓練(生活訓練)の事業所です。
生活リズムから整えたい人は、エンラボカレッジの見学から始めてみてください。
7-3. 就労継続支援A型・B型との違い
「就職はまだ難しいけれど、働く場所はほしい」という人には、就労継続支援という選択肢もあります。就労移行支援と名前が似ていますが、目的が違うんです。
| サービス | 目的 | 雇用契約 | お金 |
|---|---|---|---|
| 就労移行支援 | 一般の会社への就職を目指して訓練する | なし | 給料は出ない(利用料がかかる場合がある) |
| 就労継続支援A型 | 雇用契約を結んで、支援を受けながら働く | あり | 給料(賃金)が出る |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約を結ばずに、自分のペースで作業をする | なし | 作業に応じた工賃(作業の対価として支払われるお金)が出る |
(出典:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」)
どれが自分に合うのか分からない人のために、2025年10月から「就労選択支援」というサービスも始まっています。短い期間の作業などを通して、自分に合う働き方や就労先を一緒に整理してくれるサービスです。
(出典:厚生労働省「就労選択支援について」)
就労継続支援や就労選択支援の詳しい話は、週5がきつい人向けの記事の6章でもふれています。
7-4. ハローワーク・障害者就業・生活支援センターに相談する
「どれを選べばいいのか、一人では決められない」という人は、公的な相談窓口を頼ってみてください。
ハローワークには、障害のある人のための職業相談の窓口があります。職業相談や求人の紹介だけでなく、就職したあとのフォローまで相談できます。
(出典:ハローワーク高松「障がいのある人のための職業相談窓口」)
もう一つが、障害者就業・生活支援センターです。仕事の面と生活の面の両方から支援してくれる機関で、就職に向けた準備、面接の練習や同行、就職後の職場定着まで相談できます。生活習慣や金銭管理といった、日常生活の相談もできるんです。
3-3で書いたとおり、就労移行支援に通っていなくても、こうした支援機関と連携していることが伝われば、採用する側には安心材料になります。一人で就職活動を進めるより、相談先を1つ持っておくことをおすすめします。
就労移行支援を辞めても、使わないと決めても、就職への道はちゃんと残っています。次の8章では、ここまでで答えきれなかった細かい疑問を、Q&A形式でまとめます。
8. よくある質問

最後に、知恵袋などでよく見かける質問に、ここまでの内容をふまえて短くお答えします。詳しく知りたいものは、それぞれの章に戻って読んでみてください。
Q1. 就労移行支援は意味ないですか?
意味があるかどうかは、「通ったこと」ではなく「通っている間に何を身につけたか」で決まります。
採用する側から見ると、自分の障害特性と必要な配慮を自分の言葉で説明できるようになった人は、通った意味がはっきり伝わっていました。逆に、通っていても自己理解が深まっていない人は、選考でプラスになりにくかったんです。詳しくは3章に書いています。
Q2. 働いた経験がある人には時間の無駄ですか?
目的を決めて短く使えば、無駄にはなりません。
私は社会人経験が5年以上ある状態で1回目を利用し、3か月で卒業しました。基礎の講義で「意味ない」と感じた時間もありましたが、振り返れば得るものもありました。経験がある人ほど、実務に近い訓練の事業所を選ぶのがおすすめです(4-3・4-4参照)。
Q3. 2年通えば必ず就職できますか?
いいえ、就職は保証されていません。1章で書いたとおり、就職者を多く出している事業所と、ほとんど出せていない事業所の差が大きいのが実態です。
大事なのは期間の長さより、就職と定着の実績がある事業所を選ぶことなんですよね。実績の見方は5-2にまとめています。
Q4. 通いながらアルバイトはできますか?
原則としてできないと考えておいたほうが安全です。1-4で紹介したとおり、札幌市のように利用中のアルバイトを認めていない市区町村があります。
例外が認められる場合もあるので、アルバイトを考えているなら、通い始める前にお住まいの市区町村の障害福祉の窓口に確認してください。
Q5. 途中で辞めたら、もう一度使えますか?
使える場合もありますが、条件は市区町村の判断になります。6-4で書いたとおり、新しく2年間使えるのか、前回の続きとして延長だけになるのかは、市区町村に任されているんです。
「とりあえず辞めて、また使えばいい」と考えるより、辞める前に事業所を変える道を検討してみてください(6-3参照)。
Q6. 就職してすぐ辞めたら、事業所に迷惑がかかりますか?
事業所の評価に影響するのは事実です。1-5で書いたとおり、事業所の収入は、就職した人が6か月以上働き続けている割合によって変わるからです。
ただ、それを理由に体調を崩してまで働き続ける必要はありません。就職後に困ったことがあれば、辞める前に事業所の定着支援に相談してみてください。職場との間に入ってもらえるだけで、続けられることもあるんです。

事業所に悪いと思って、つい我慢してしまいそうです……。

その気持ちはよく分かります。でも、あなたの体調より大事なものはありませんよ。事業所の人も、あなたが無理をして倒れることは望んでいないはずです。
Q7. 支援員が合わない・冷たいと感じたらどうすればいいですか?
まずは担当の変更を相談してみてください。担当者本人に言いにくければ、事業所の管理者やサービス管理責任者に伝える方法があります(6-2参照)。
それでも改善しないなら、事業所を変えることも考えてみてください。支援員との相性は、就労移行支援の効果を大きく左右します。我慢して通い続けるより、合う人を探したほうが、結果的に就職への近道になると私は思います。
(Q1〜Q7の情報源:Yahoo!知恵袋の相談、Googleの「関連する質問」)
まとめ

「就労移行支援はやめとけ」は、半分正解です。ただし当てはまるのは、制度そのものではありません。
- 制度が合わない人:体調がまだ不安定な人、すぐに働ける人、生活費の見通しが立たない人(2-1)
- 事業所が合っていない人:目的と訓練内容がずれている人(2-3・5章)
- 時期が合っていない人:生活リズムから整える段階の人(7-2)
この3つのどれかに当てはまるなら、無理に通う必要はありません。転職サイトや自立訓練、公的な相談窓口など、ほかの道があります。
逆に、同じような理由で仕事が続かなかった人や、自分の特性と配慮を言葉にできていない人にとって、就労移行支援は大きな助けになります。私自身がそうでした。
一般雇用で3社を経験して、環境を変えても同じところで倒れていた私が、3か月通って特例子会社に入り、13年以上働き続けています。
障害者雇用に移ったあとも、波はありました。それでも辞めずに続けてこられたのは、休職、リワーク、異動という段階を踏めたからだと思っています。就労移行支援は、その段階の一つとして、2回とも私を支えてくれました。
迷っているなら、まずは2〜3か所を見学して比べてみてください。見学で何を聞けばいいかは、就労移行支援の見学で聞く質問20にまとめています。
あなたの目的に合う事業所が見つかれば、「やめとけ」は「使ってよかった」に変わるはずです。
まずは障害別のコースがあるatGPジョブトレで、見学・相談から始めてみてください。


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